M&Aでは、「のれん」という用語をよく聞きますが、どのような意味なのでしょうか?
【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
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これまで見てきたように、M&Aはある会社がある会社を取得することです。
では、何のために取得するのかというと、取得することでシナジー効果などによる買収価値が見込めるからこそ取得するのです。
となると、M&Aでは、その価値の分だけ超過収益力を見込んで買収することになります。
そこで、会計上はその買収価額と会社の純資産額との差額を超過収益力と考え、「のれん」と表現するのです。
「のれん」は貸借対照表上において目に見えない資産であることから無形固定資産として計上されます。
ここで実務上、問題となるのは、その後の会計処理です。
計上された「のれん」は、会計上その効果の及ぶ期間や投資の回収期間を考慮して20年以内で償却する必要があります。
その償却費は損益計算書上、販売費および一般管理費で処理されます。
そうすると、5年で償却するのか、10年で償却するのかで販売費及び一般管理費の金額が異なってきます。
もっと言えば販売費及び一般管理費を通して営業利益に影響が出てしまうのです。
例えば、10億円の「のれん」を5年で償却すれば毎年2億円(10億円÷5年=2億円)の負担です。
10年で償却すれば毎年1億円(10年÷10年=1億円)の負担です。
償却年数は一度決めると変更はできませんので何年で償却するべきか重要な問題です。
では、何年で償却するのが妥当なのでしょうか?
償却年数は個々のM&Aの投資回収観点から考えていきます。
例えば、M&Aの投資計画において3年で投資回収をしようという計画であれば計上された「のれん」は3年で償却することとなります。
また、「のれん」は超過収益力を考慮したものであることから、常に「超過収益力がある投資をした結果なのか」という視点で、その価値を確認することが求められます。
そのため、せっかくM&Aをしても、その効果がなかった場合はその時点で「のれん」を一度に減損(損失処理)しなければなりません。
M&Aの実行に当たっては、その効果がしっかり見込めるM&Aなのかを見極め、