任意後見契約書(移行型)
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この書式は、任意後見契約書(移行型)のひな形です。
書式の一部抜粋(本文)
委任契約及び任意後見契約公正証書(移行型)
本公証人は、委任者○○○○(以下「甲」という。)及び受任者○○○○(以下「乙」という。)の嘱託により、次の法律行為に関する陳述の趣旨を録取してこの証書を作成する。
第1 委任契約
第1条(契約の趣旨) 甲は、乙に対し、令和○年○月○日、甲の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務(以下「委任事務」という。)を委任し、乙はこれを受任する。
第2条(任意後見契約との関係) 前条の委任契約(以下「本委任契約」という。)締結後、甲が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況になり、乙が第2の任意後見契約による後見事務を行うことを相当と認めたときは、乙は、家庭裁判所に対し、任意後見監督人の選任の請求をする。
2 本委任契約は、第2の任意後見契約につき任意後見監督人が選任され、同契約が効力を生じた時に終了する。
第3条(委任事務の範囲) 甲は、乙に対し、「別紙代理権目録」記載の委任事務(以下「本件委任事務」という。)を委任し、その事務処理のための代理権を付与する。
第4条(証書等の引渡し等) 甲は、乙に対し、本件委任事務処理のために必要と認める範囲で、適宜の時期に、次の証書等及びこれらに準ずるものを引き渡す。
①登記済権利証、②実印・銀行印、③印鑑登録カード・住民基本台帳カード、④預貯金通帳、⑤各種キャッシュカード、⑥有価証券・その預り証、⑦年金関係書類、⑧土地・建物賃貸借契約書等の重要な契約書類
2 乙は、前項の証書等の引渡しを受けたときは、甲に対し、預り証を交付してこれを保管し、右証書等を本件委任事務処理のために使用することができる。
第5条(費用の負担) 乙が本件委任事務を処理するために必要な費用は、甲の負担とし乙は、その管理する甲の財産からこれを支出することができる。
第6条(報酬)
〔報酬額の定めがある場合〕
甲は、乙に対し、本件委任事務処理に対する報酬として毎月末日限り金○○円を支払うものとし、乙は、その管理する甲の財産からその支払を受けることができる。
〔無報酬の場合〕
乙の本件委任事務処理は、無報酬とする。
第7条(報告) 乙は、甲に対し、○か月ごとに、本件委任事務処理の状況につき報告書を提出して報告する。
2 甲は、乙に対し、いつでも、本件委任事務処理状況につき報告を求めることができる。
第8条(契約の変更) 本委任契約に定める代理権の範囲を変更する契約は、公正証書によってするものとする。
第9条(契約の解除 甲及び乙は、いつでも本委任契約を解除することができる。ただし、解除は公証人の認証を受けた書面によってしなければならない。
第10条(契約の終了) 本委任契約は、第2条第2項に定める場合のほか、次の場合に終了する。
一 甲又は乙が死亡し又は破産手続開始決定を受けたとき。
二 乙が後見開始の審判を受けたとき。
第2 任意後見契約
第1条(契約の趣旨) 甲は乙に対し、令和○年○月○日、任意後見契約に関する法律に基づき、精神上の障害により事理を非職する能力が不十分な状況における甲の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務(以下「後見事務」という。)を委任し、乙はこれを受任する。
第2条(契約の発効) 前条の任意後見契約(以下「本任意後見契約」という。)は、任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずる。
2 本任意後見契約締結後、甲が精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況になり、乙が本任意後見契約による後見事務を行うことを相当と認めたときは、乙は、家庭裁判所に対し任意後見監督人の選任の請求をする。
3 本任意後見契約の効力発生後における甲と乙との間の法律関係については、任意後見契約に関する法律及び本契約に定めるもののほか、民法の規定に従う。
第3条(後見事務の範囲) 甲は、乙に対し、別紙「代理権目録」記載の後見事務(以下「本件後見事務」という。)を委任し、その事務処理のための代理権を付与する。
第4条(身上配慮の責務) 乙は、本件後見事務を処理するに当たっては、甲の意思を尊重し、かつ、甲の身上に配慮するものとし、その事務処理のため、適宜甲と面接し、ヘルパーその他日常生活援助者から甲の生活状況につき報告を求め、主治医その他医療関係者から甲の心身の状態につき説明を受けることなどにより、甲の生活状況及び健康状態の把握に努めるものとする。
第5条(証書等の保管等) 乙は、甲から本件後見事務処理のために必要な次の証書等及びこれらに準ずるものの引渡しを受けたときは、甲に対し、その明細及び保管方法を記載した預り証を交付する。
①登記済権利証、②実印・銀行印、③印鑑登録カード・住民基本台帳カード、④預貯金通帳、⑤各種キャッシュカード、⑥有価証券・その預り証、⑦年金関係書類、⑧土地・建物賃貸借契約書等の重要な契約書類
2 乙は、本任意後見契約の効力発生後甲以外の者が前項記載の証書等を占有所持しているときは、その者からこれらの証書等の引渡しを受けて、自らこれを保管することができる。
3 乙は、本件後見事務を処理するために必要な範囲で前記の証書等を使用するほか、甲宛の郵便物その他の通信を受領し、本件後見事務に関連すると思われるものを開封することができる。
第6条(費用の負担) 乙が本件後見事務を処理するために必要な費用は、甲の負担とし、乙は、その管理する甲の財産からこれを支出することができる。
第7条(報酬)
〔報酬額の定めがある場合〕
1 甲は、本任意後見契約の効力発生後、乙に対し、本件後見事務処理に対する報酬として毎月末日限り金○○円を支払うものとし、乙は、その管理する甲の財産からその支払を受けることができる。
2 前項の報酬額が次の事由により不相当となった場合には、甲及び乙は、任意後見監督人と協議のうえ、これを変更することができる。
一 甲の生活状況又は健康状態の変化
二 経済情勢の変動
三 その他現行報酬額を不相当とする特段の事情の発生
3 前項の場合において、甲がその意思を表示することができない状況にあるときは、乙は、任意後見監督人の書面による同意を得てこれを変更することができる。
4 第2項の変更契約は、公正証書によってしなければならない。
5 後見事務処理が、不動産の売却処分、訴訟行為、その他通常の財産管理事務の範囲を超えた場合には、甲は乙に対し毎月の報酬とは別に報酬を支払う。この場合の報酬額は、甲と乙が任意後見監督人と協議の上これを定める。甲がその意思を表示することができないときは、乙は任意後見監督人の書面による同意を得てこれを決定する。
〔無報酬の場合〕
1 乙の本件後見事務処理は、無報酬とする。
2 本件後見事務処理を無報酬とすることが、次の事由により不相当となったときは、甲及び乙は、任意後見監督人と協議のうえ、報酬を定めることができる。
一 甲の生活状況又は健康状態の変化
二 経済情勢の変動
三 その他本件後見事務処理を無報酬とすることを不相当とする特段の事情の発生
3(報酬額の定めのある場合の3項に同じ)
4(報酬額の定めのある場合の4項に同じ)
第8条(報告) 乙は、任意後見監督人に対し、3か月ごとに、本件後見事務に関する次の事項について書面で報告する。
一 乙の管理する甲の財産の管理状況
二 甲を代理して取得した財産の内容、取得の時期・理由・相手方及び甲を代理して処分した財産の内容、処分の時期・理由・相手方
三 甲を代理して受領した金銭及び支払った金銭の状況
四 甲の身上監護につき行った措置
五 費用の支出及び支出した時期・理由・相手方
六 報酬の定めがある場合の報酬の収受
2 乙は、任意後見監督人の請求があるときは、いつでも速やかにその求められた事項につき報告する。
第9条(契約の解除) 甲又は乙は、任意後見監督人が選任されるまでの間は、いつでも公証人の認証を受けた書面によって、本契約を解除することができる。
2 甲又は乙は、任意後見人が選任された後は、正当な事由がある場合に限り、家庭裁判所の許可を得て、本契約を解除することができる。
第10条(契約の終了) 本任意後見契約は、次の場合に終了する。
一 甲又は乙が死亡又は破産手続開始決定を受けたとき。
二 乙が後見開始の審判を受けたとき。
三 乙が任意後見人を解任されたとき。
四 甲が任意後見監督人選任後に法定後見(後見・保佐・補助)開始の審判を受けたとき。
五 本任意後見契約が解除されたとき。
2 任意後見監督人が選任された後に前項各号の事由が生じた場合、甲又は乙は、速やかにその旨を任意後見監督人に通知するものとする。
3 任意後見監督人が選任された後に第1項各号の事由が生じた場合、甲又は乙は、速やかに任意後見契約の終了の登記を申請しなければならない。
書式内で注意すべきポイント
注1 任意後見契約とは、任意後見契約に関する法律(以下「任意後見法」という。)の施行により、新たに創設された制度である。
この任意後見制度は、本人が契約締結に必要な判断能力を有している間に、認知症、知的障害、精神障害等の精神上の障害により自己の判断能力が不十分な状況となったときに財産管理(後見事務)をしてもらう任意後見人を事前に任意後見契約を締結することによって決めておき、家庭裁判所が選任する任意後見監督人の監督の下で、後見人による保護を受けることができるもので、自己の貢献の在り方を自らの意思で決定するという自己決定の尊重の理念に即して、法定後見制度と相互に補充しあう契約型の制度として創設されたものである。
注2 任意後見契約は、大別すると①移行型、②即効型、③将来型の3つに区別できる。
①移行型とは、契約締結時から受任者に財産管理等の事務を委託し、自己の判断能力の低下後は公的機関の監督の下で受任者に事務処理を続けてもらう場合の契約形態である。
②即効型とは、補助対象者(場合によっては保佐対象者)等、既に判断能力が不十分な状態にある本人が法定後見による保護を受けるよりも任意後見による保護を選択し、契約締結の直後に契約の効力を発生させることを前提とした上で、本人が自ら任意後見契約を締結する場合である。
③将来型とは、任意後見契約法の法文に即した典型的な契約形態であり、十分な判断能力を有する本人が契約締結の時点では受任者に後見事務の委託をせず、将来自己の判断能力が低下した時点で初めて任意後見人による保護を受けようとする場合の契約形態である。
本契約書は、①移行型を想定したものである。
注3 任意後見契約は、適法かつ有効な契約の締結を担保するため、公証人の作成する公正証書によってしなければならない(任意後見法3条)。そして、公証人からの嘱託により、すべての任意後見契約が自動的に登記される仕組みとなっている(後見登記に関する法律5条)。
注4 任意後見人の資格には法律上の制限がないので、どのような人を任意後見人に選任するかは、専ら本人の選択にゆだねられている。
注5 第2条において、任意後見契約は、任意後見監督人が選任された時からその効力を生ずると規定しているが、任意後見契約の効力発生時期について、他の時期を定めることはできない(任意後見法2条1号)。
注6 代理権目録には、「任意後見契約に関する法律第3条の規定による証書の様式に関する省令」付録第1号様式(チェック方式)と付録第2号様式(自由記載方式)の2種類があり、そのいずれかによって任意後見人が代理権を行うべき事務の範囲を特定して記載しなければならない。
注7 ・・・・・
注8 ・・・・・
注9 ・・・・・
注10 ・・・・・