決算賞与を従業員に支給するまでの手続きについて、税法上、注意すべきポイントがあれば教えてください。
【この記事の監修者】 讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
前回、税法上で決算賞与が経費として認められるためには5つの条件があることを解説しました。
今回は、決算賞与を支給するまでの手続きで注意するべきポイントについて解説します。
実際に、決算賞与について税務調査で争点になる点は2つあります。
それは、決算賞与を支給するまでの手続きについてです。
【支給するすべての従業員に決算日までに通知したか?】
まずひとつ目のポイントは、決算賞与を支給するすべての従業員に対して、決算日までに本当に通知をしたかどうかです。
これは、翌事業年度になってから決算賞与として税金逃れを考える経営者が後を絶たないからに他なりません。
実際に、決算日を過ぎてから、「決算賞与で経費に落とせるか?」と質問してくるケースさえあります。
この争点の怖いところは、キチンと手続きをしているのにもかかわらず、不備であることが税務調査で立証されるリスクがある点です。
たとえば、支払う側の経営者は覚えていても、従業員が忘れている可能性があります。
税務調査で、その忘れた従業員から、「決算賞与はもらっていない」と証言されたら調査官は黙っていません。
このリスクを回避するためには、書面で通知を行うのが原則です。
書面を2通用意して、控えを会社で保存するのはもちろん、認印でなく従業員の筆跡を残しておくことがポイントになります。
なぜなら、筆跡は証拠となるからです。
【支給するすべての従業員に1ヵ月以内に支払ったか?】
2つ目のポイントは、決算賞与を支給するすべての従業員に対して、1ヵ月以内に支払われたかどうかです。
全員の口座に振り込めば、通帳に記録が残るから証拠になります。
しかし、現金支給だと話は別です。
いつ支払ったのか記録に残せないので、翌年度から1ヵ月以内に支給されたかどうかが税務調査の争点になります。
したがって、いかに決算賞与を支払った日を記録に残すかが大切なのです。
【条件よりも証拠を残すことが重要】
このように、決算賞与については規定が細かいのが特徴です。
さらに輪をかけて、手続きの不備があれば確実に経費に落とせるかどうかは保証できません。
こうした事態を避けるためには、証拠を残すことが必要です。
決算日の前後の経理処理は、ただでさえ目をつけられやすい項目であり、決算賞与は調査官にチェックされやすい項目になります。
実務上、決算賞与は単に条件に当てはまれば経費に落とせるものではないことを肝に銘じてください。