全国に点在する廃墟を訪れることを楽しむ、「廃墟マニア」と呼ばれる人達がいます。
一説には、1990年代から、ある種のブームが起こったともいわれています。
また、中には廃墟や空き家を心霊スポットとして肝試しに使ったり、破壊行為を楽しむ目的で廃墟に侵入する人もいるようです。
ところで、こうした廃墟や空き家などに無断で侵入するする行為は犯罪にならないのでしょうか?
問題の核心をチェック
近所にある空家が心配だという相談者。
所有者がわからず、以前から空家になっているようで、この数年、夜中に若者が集団で中に入って行って、肝試しのようなことをしているらしいという。
治安の問題もあるため、法的に取り締まることはできないだろうかというが……。
リーガルアイ
こうしたケースでは、「軽犯罪法」が適用される可能性があります。
場合によっては、「刑法」の住居侵入罪が適用される可能性もあるでしょう。
「軽犯罪法」
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
一 人が住んでおらず、且つ、看守していない邸宅、建物又は船舶の内に正当な理由がなくてひそんでいた者
ちょっとしたはずみで人が犯してしまうような軽微な秩序違反行為に対して定めている法律が「軽犯罪法」です。
悪質な重大犯罪を未然に防ぐ目的もあり、1948(昭和23)年に制定された法律で、全部で33の違反行為が罪として規定されています。
なお、拘留とは、受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰で、科料とは、1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰です。
では次に、「住居侵入罪」が適用されるケースはどういう場合なのかについて見てみます。
「刑法」
第130条(住居侵入等)
正当な理由がないのに、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは艦船に侵入し、又は要求を受けたにもかかわらずこれらの場所から退去しなかった者は、3年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。
条文にある「看守」とは、直接その建物に存在して管理する場合は当然として、カギをかけてそのカギを保管している場合も法的には当てはまります。(最決昭31・2・28裁集刑117・1357)
「邸宅」とは、豪邸のような家のことではありません。
住居として使用されていない空家や、閉鎖された別荘、廃家などをいいます。
「建物」とは、住宅や邸宅以外の建造物のことです。
たとえば、官公庁や学校、事務所、倉庫などが当てはまります。
相談者のケースで考えてみると、人が住んでいなくても管理されている住宅であれば、若者などの侵入者たちは住居侵入罪に問われる可能性があります。
一方、所有者がわからず管理もされていない、さらにはカギもないような状態で放置されているような空家であれば、軽犯罪法が適用される可能性があるでしょう。
ちなみに、軽犯罪法1号は「潜伏の罪」ともいいますが、2016年3月、宮城県山元町にある旧小学校舎に18~23歳の男性9人が無断侵入してサバイバルゲームをしたとして軽犯罪法違反の疑いで任意捜査をされているという報道がありました。
この事件などは、建物(現在では使われていない小学校舎)に正当な理由なく侵入したために軽犯罪法での捜査になったということだと思います。
なお、