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内部告発から発覚した不正売上事例について



この数年、内部告発に関する報道が多くなったように感じます。
不正会計において、内部告発から発覚した事例について教えてください。


【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

近年、多くの企業で内部告発に基づく不正が発覚しています。

今回は、予算を達成すべく売上の前倒し計上が行われた典型的な不正事例を紹介します。

不正要素を簡潔にまとめると以下のようになります。

不正科目

売上高

不正要因

予算達成のための売上前倒し

主たる不正手法

相手先の検収が完全に終わっていないにもかかわらず、顧客の承諾を得られたとした


売上の前倒計上は過去に何度も生じている不正ですが、今回の事例で驚いたのは、第三者委員会調査報告書の冒頭に載っていた内部告発の概要です。

内部告発文書は対象会社の監査法人に届いたそうですが、第三者委員会の調査報告書に一部が載っていました。

「A社(対象会社)の2017年3月度売上高の半数以上は、売上計上基準を逸脱したものが売上計上されている。」
「経営トップの指示で、“ISO・内部統制など関係ない!” “売上に上げられるものはどんな手段を使っても期末に売上に上げろ!”(後略)」

思わず目を疑うような内容の内部告発です。

対象会社は電子部品の他に、電子部品組立装置も販売しています。

組立装置は当社から出荷をしたとしても売上にはならず、先方が当初の注文どおりの仕様なのか機能の確認・検収をして、仕様未達の不具合等(対象会社では残件と呼ばれます)がないことの確認が売上成立に必要な要件となります。

ところが、内部告発文書では次のような記述があったとのことです。

「残件が残っていても、納品作業書に記載せず、合格と記載させ、残件は別途内緒で処理。」
「納品作業もしていないのに、納品作業書を偽造・指示。」
「顧客合格署名偽造、顧客に署名させるペンを購入し、そのペンを修正用として保管。」

仕様未達でフォローが必要であるにもかかわらず、納品作業書にはその旨記載せず合格とし、残った作業は別途内緒で処理とは、納品作業書の意味がありません。
さらに、署名偽造に至っては言葉もありません。

また、対象会社の経理規程には次のことが規定されていました。

「売上の計上基準は、出荷基準とする。ただし、注文書など販売に関する契約書により顧客検収の定めがある場合は、検収基準とし納品立会後の顧客合格日をもって検収日の基準とする。」

顧客検収の場合は検収日基準と明記されていたのですが、実際は次のことが認められたということです。

①「検収」後も残件対応を行なうことを顧客と約し、残件があるにもかかわらず顧客の承諾を得られたとして、作業報告書等に顧客の署名を得る行為

②顧客都合により現地調整が完了していないにもかかわらず、「検収」後に現地調整の完了及び不具合等が発生した場合の対応を行なうことを約し、顧客の承諾を得られたとして、作業報告書等に顧客の得る行為

なぜ、このような運用がなされたのかといえば、

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