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節税目的の役員報酬引き上げが税負担増加の要因になるケース

法人が支給する役員報酬は一定の要件を満たせば損金に算入できるため、役員の報酬額を増やすことで法人税を節税できます。

一方で、役員報酬を増やしたことが法人税の節税効果以上のデメリットを生じさせるケースもあるため、今回は役員報酬の支給額を増やしたことで税負担が重くなる理由について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

法人税法上の役員および役員報酬の範囲

法人税法上における主な役員の範囲は下記の通りで、役員報酬は会社役員に対して支給される金銭または経済的利益だけでなく、債務免除による利益も含まれます。

<法人税法上の主な役員>

・取締役
・執行役
・会計参与
・監査役
・理事
・監事
・清算人
・相談役
・顧問
・法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者)以外の者で、その法人の経営に従事しているもの

経済的な利益とは、法人が役員に対して実質的に給与を支給したのと同様の経済的効果をもたらすものをいいます。

たとえば、役員に譲渡した資産の譲渡価額が低額だった場合、譲渡資産の時価と譲渡価額の差額が経済的利益となります。

法人が役員に対して継続的に供与している経済的利益については、利益の額が毎月おおむね一定である場合、定期同額給与に該当するので損金算入が認められます。

しかし、経済的利益を継続的に供与していたとしても、供与している利益の額が毎月一定でないときは、定額同額給与に該当しないことから、損金の額に算入できません。

役員報酬を増やすことで税負担が増える理由

役員報酬を損金の額に算入できたとしても、税負担が重くなるケースもあるので注意してください。

役員報酬に対する税率は法人税よりも高い

役員報酬を支払った場合、法人税は節税できますが、報酬を受け取った役員の所得税は増加することになります。

法人税の税率は、資本金1億円以下の普通法人等については年800万円以下までは15%、800万円を超える部分には23.2%が適用されます。

所得税の税率は最低税率5%と法人税よりも低いですが、課税所得金額900万円以上からは税率が33%と法人税よりも高くなり、最高税率は法人税の倍近くの45%です。

役員報酬に節税効果を期待できるのは、課税対象になる金額を法人税と所得税に分散することで適用税率を下げられるからです。

役員への報酬額が一定以内に収まるなどの条件が整えば、役員報酬の増額が節税になることもありますが、すでに一定以上の給与所得を得ている役員の報酬額を増やしても適用税率は下がりませんし、税率が上がってしまうとその分だけ税負担は増えます。

役員の社会保険料の増加

社会保険料は企業と役員が負担することになりますが、保険料の額は毎月の給与・報酬額によって決まります。

年間の報酬額が増えれば社会保険料の額も増えるため、法人税の税負担が減ったとしても、社会保険料の増額分を加味すると、税負担額が上がることが考えられます。

特定の税目だけ節税できたとしても、トータルの税負担が増えれば本末転倒となりますので、法人税や所得税など、一つの税目だけで損得を判断しないことが大切です。

なお、役員報酬に対して課される健康保険料や厚生年金保険料には上限が設けられており、設定されている上限の額は毎月の役員報酬と役員賞与で異なりますので、月額報酬と役員賞与の比率を変えるだけで保険料を抑制できます。

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