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法人税法上の有価証券の評価差額と譲渡損益の取扱い

法人が有する有価証券は、事業年度末に評価額を計算し、差額を益金または損金として算入しなければなりません。

また、有価証券を売却した際の課税関係は個人投資とは異なる部分があるため、今回は法人税法上の有価証券の評価差額および譲渡損益の取扱いについて解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

法人税法における有価証券の種類

法人税法における有価証券は、大きく「売買目的有価証券」と「売買目的外有価証券」に区分されます。

「売買目的有価証券」は、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した有価証券をいい、それ以外の有価証券は「売買目的外有価証券」に該当します。

期末評価の方法は、売買目的有価証券と売買目的外有価証券で異なり、売買目的有価証券は事業年度終了時に時価法で評価額を算出します。

時価評価した際に生じた評価益または評価損は、益金または損金として算入し、翌期首において洗替方式で戻入れを行います。

一方、売買目的外有価証券は事業年度終了時に原価法で評価額を算出することになりますが、償還期限および償還金額の定めのあるものについては、償却原価法で評価を行い、加減算額を益金または損金に算入します。

有価証券の期末評価のしかた

期末評価を行う場合、適用する評価方法によって算出される評価額は異なるので注意してください。

時価法

時価法は、事業年度終了時の時価を評価額とする方法です。

事業年度終了時に有する有価証券を銘柄ごとに区別し、銘柄を同じくする有価証券については、次の有価証券の区分に応じて算出した額にその有価証券の数を乗じて時価評価額を計算します。

<有価証券の区分>
・取引所売買有価証券
・店頭売買有価証券および取扱有価証券
・その他価格公表有価証券
・上記以外の有価証券

原価法

原価法は、総平均法と移動平均法のいずれかを用いて期末の売買目的外有価証券の帳簿価額を算出し、その額を事業年度終了時の評価額とする方法です。

移動平均法は、有価証券を銘柄別に分け、銘柄を同じくする有価証券を取得する都度、その有価証券の取得直前の帳簿価額と、取得した有価証券の取得価額との合計額をこれらの有価証券の総数で除した平均単価を算出し、その平均単価を一単価当たりの帳簿価額とします。

総平均法は、有価証券を銘柄別に分け、銘柄を同じくする有価証券については事業年度開始時において有していた有価証券の帳簿価額と、事業年度において取得した有価証券の取得価額の総額との合計額をこれらの有価証券の総数で除して平均単価を算出し、その平均単価を一単位当たりの帳簿価額とします。

償却原価法

償却原価法は、償還有価証券(償還期限および償還金額の定めのある売買目的外有価証券)の期末評価をする際に用いる評価方法です。

事業年度終了時の償却原価法適用前の帳簿価額に、調整差益または調整差損に相当する額を加算または減算した金額を事業年度終了時の帳簿価額とし、加減算額については益金または損金に算入します。

有価証券を譲渡した時の取扱い

法人が有価証券を譲渡した場合、有価証券ごとに取得価額の算出方法や損益の計上時期が異なるケースがあるので注意が必要です。

有価証券を譲渡した際の損益の算出方法

法人が有価証券を譲渡した場合には、有価証券の譲渡対価から有価証券の譲渡に係る原価を差し引き、譲渡利益額または譲渡損失額を譲渡に係る契約日(約定日)の属する事業年度の益金または損金に算入します。

有価証券の譲渡に係る対価(みなし配当がある場合はみなし配当の額を控除した金額)が、有価証券の譲渡に係る原価を超える場合には譲渡利益額、下回るときは譲渡損失額となります。

有価証券の取得価額の算出方法

有価証券(信用取引等またはデリバティブ取引で現物取得した場合を除く)は、購入の代価を取得価額とします。

購入手数料や有価証券を購入するために要した費用も取得価額に加算しますが、有価証券を取得するために要した通信費や名義書換料に関しては、取得価額に含めないことも認められています。

一単位当たりの帳簿価額の算出方法

有価証券の一単位当たりの帳簿価額は、売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券およびその他有価証券の区分ごとに、かつ、その銘柄を同じくするものごとに移動平均法または総平均法により算出します。

なお、法定評価方法は移動平均法となっているため、総平均法を用いる際は、有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに、税務署に対して「有価証券の一単位当たりの帳簿価額の算出方法の届出書」を提出する必要があります。

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