予算必達のプレッシャーから起きた原価付替え不正取引事例




予算達成を重要視するなど、経営者からのプレッシャーによって社員が行なってしまった不正取引事例があれば教えてください。

【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

不正取引で多いのは、予算達成を目的とする事例です。

経営者自らが不正を実行するケースもありますし、「赤字を出さないように」とプレッシャーを与えて、結果として従業員が不正の実行を容認するケースもあります。

今回は、従業員から「反対するのが怖かった」と恐れられる経営者から、「赤字を出さないように」と指示を受けたことから起きた不正事例を紹介します。

予算達成を重要視する社風から原価の付替え不正を実行

対象企業は上場会社の100%子会社で、事業内容は製鉄プラント事業、化学・環境プラント事業、プラント建設工事・保全事業、分析事業、砕石事業等です。

当社は設立当初から、親会社からの自主、独立の事業経営を求められており、業績向上が絶対の課題でした。
そのため、予算達成を重要視していました。

このような経営姿勢が全社的に予算必達の社風を生み出し、従来から粗利益率達成が困難な案件から、粗利益に余裕がある案件に原価の付替が行なわれる傾向があったということです。

ただし、従来から行なわれていた原価の付替えは同時期に完成する案件の粗利益率を平準化する目的で実施されたものであり、原価を繰り延べたり、先取りしたりする目的はなかったということです。

不正の手口

今回の不正は、トラブルが生じた大型案件での巨額な赤字を、黒字が見込まれる他の案件へ原価を付け替え、全体としての赤字発生を回避しようとしたものでした。
その手口を詳しく見ていきましょう。

当該会社は、各案件の外注先に発注をする際には、購入仕様書を通じて発注が行なわれます。
購入仕様書には、案件ナンバーや案件名、納期、納入場所、数量等を入力して作成・出力されます。
そして、外注先へ見積もり依頼をして値段交渉をした後、外注先に注文書を送付します。
工事管理システムには、購入仕様書に基づき、仕入先業者名や見積金額、最終妥結金額などを入力します。

今回のケースでは、赤字案件から黒字案件へ不正に原価を付け替える際、購入仕様書には原価の付け替え先の案件名が記載されていました。
すると、見積り書で見積ってもらった案件名と、購入仕様書の案件名が異なることとなりますが、当該会社はこれらの不一致を隠すために、見積書に記載されている案件名を修正液で消去するなどの隠蔽がなされていたということです。

これまで、さまざまな不正事例を見てきましたが、外部からの見積り書の案件名を修正液で隠蔽するという手口はアナログ的で、ある意味で新鮮にも感じます。

特別調査委員会による調査報告書によると、修正液による不正以外にも次のような不正が行なわれていたようです。

・社員の稼働工数の記録時に関与していない稼働工数を記録する、もしくは関与した工事の稼働工数を記録しない
・研究開発費として処理すべき費用を貯蔵品として資産計上
・実態のない在庫の計上
・架空の工事による売上計上


なお、

 

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