労働基準監督署の調査・指導を無視し続け、法律違反と虚偽説明を繰り返していた会社の社長ら2名が逮捕されたようです。
社長、あなたの会社は大丈夫ですか?
今回は、労働基準監督官の仕事と権限について解説します。
事件はこうして起きた
「外国人実習生に違法な長時間労働させた疑い 社長ら逮捕」(2016年3月22日 朝日新聞デジタル)
外国人技能実習生に違法な長時間労働をさせたなどとして、岐阜労働基準監督署は、婦人・子供服製造会社社長(岐阜県岐南町・50歳)と、技能実習生受け入れ事務コンサルタントの男(岐阜市・50歳)を最低賃金法と労働基準法の違反容疑で逮捕した。
2014年12月~15年8月、2人は共謀して中国人技能実習生4人に対し、岐阜県の最低賃金(当時は時給738円)に満たない額で、しかも1日8時間の法定労働時間を超えて働かせ、割増賃金も支給していなかった。
技能実習生は、午後10時~翌午前5時の深夜帯や休日にも働かされ、1ヵ月当たり133~187時間の時間外労働があり、不払い賃金の合計は、約475万円になるという。
2015年9月に、技能実習生が労働基準監督署に申告したことで、今回の発覚につながった。
容疑者の2人は、技能実習生の帳簿の改ざん、労働基準監督署の立ち入り調査に応じず無視、虚偽説明の繰り返しなどをしていたことから、悪質性が高いと判断された。
技能実習生に対する労働基準法違反などでの逮捕は異例だという。
リーガルアイ
【違法な長時間労働・割増賃金の不払いは労働基準法違反】
1日8時間、1週間で40時間の「法定労働時間」を超えて「時間外労働」(残業)させた場合や、休日労働・深夜業を行わせた場合、使用者は労働者に「割増賃金」(残業代)を支払わなければいけません。(労働基準法第32条)
ただし、労使間で「36協定(さぶろくきょうてい)」を結んでいる場合は、その限りではありません。(労働基準法第37条)
なお、労働基準監督署へ届け出をしないで時間外労働をさせたり、時間外労働をさせて割増賃金を支払わなかったりした場合、労働基準法違反で6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処されるので注意が必要です。
「未払い残業代」の詳しい解説はこちら⇒
「残業代を払わない会社には2倍の“おしおき”が!」
【最低賃金以上の額を支払わないと最低賃金法違反】
使用者は、国で決められた最低賃金よりも多くの給料を労働者に対して支払わなければいけません。(最低賃金法第4条)
都道府県ごとに定められたものを「地域別最低賃金」、特定産業に従事する労働者を対象に定められたものを「特定最低賃金」といい、使用者は、いずれかのうち高いほうの最低額以上を労働者に支払わなければいけません。
なお、最低賃金が支払われない場合、労働者は労働基準監督署に訴えることができますし、申告をしたことを理由に、使用者は労働者を解雇したり、不利益な取扱いをしたりしてはいけません。(最低賃金法第34条)
「最低賃金法」の詳しい解説はこちら⇒
「タダより高いものはない!?給料不払いで書類送検」
【労働基準監督官の仕事と権限の範囲】
労働に関する法律に基づいて、労働者の最低労働基準や職場の安全衛生を守るために企業を調査・監督し、法律が守られていなければ使用者を指導するのが労働基準監督署です。
労働基準監督署には、厚生労働省の専門職員である「労働基準監督官」が所属していて、企業への立ち入り調査をします。
これを「臨検」といいます。
臨検には、計画的に対象企業を選定して調査する「定期監督」や、労働者からの申告・告発を受けて調査する「申告監督」など、いくつかの種類があります。
労働基準監督官は、おおむね次のような流れで企業を調査・監督します。