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近年、労使関係で問題となっているのが、いわゆる「ブラック企業」です。
残業代未払いや違法な時間外労働による健康障害など、さまざまなトラブルが続出しています。
問題の核心をチェック
2013年9月、厚生労働省は初の試みとして「若者の使い捨てが疑われる企業等への重点監督」を実施しました。
その結果、驚くべきことに、企業全体の8割以上から労働基準関係法令の違反が見つかったということです。
公表された資料によれば、離職率の高さや過去の違反歴、電話相談での苦情の情報などをもとに、若者の「使い捨て」が疑われる企業等5,111事業場に対して監督・調査を集中的に実施した結果、82%にあたる4,189事業場で何らかの労働基準関係法令違反が見つかり、是正勧告書を交付したようです。
具体的な数字を以下に記します。
違法な時間外労働があったもの | 2,241事業場(43.8%) |
賃金不払残業があったもの | 1,221事業場(23.9%) |
過重労働による健康障害防止措置が実施されていなかったもの | 71事業場(1.4%) |
また、「健康障害防止措置」と「1か月の時間外・休日労働時間が最長の者の実績」についての結果は以下のとおりです。
過重労働による健康障害防止措置が不十分なもの | 1,120事業場(21.9%) |
労働時間の把握方法が不適正なもの | 1,208事業場(23.6%) |
1か月の時間外・休日労働時間が80時間超※うち100時間超 | 1,230事業場(24.1%)730事業場(14.3%) |
業種別で見ると「製造業」が最も多く、続いて小売・卸売業などの「商業」、「運輸・交通業」の順となっています。
具体例としては、
・パート社員が月170時間もの残業をしていた事例
・約1年間、賃金が支払われていなかった事例
・正社員のおよそ7割を係長職以上の「管理監督者」扱いにして時間外労働の割増賃金を支払わない、いわゆる「名ばかり管理職」にしていた事例
などが報告されています。
リーガルアイ
労働者から残業をしたのに残業代が支払われていないと主張され紛争になるケースが近年、急増しています。
使用者は、労働者の労働時間をきちんと把握、管理し、支払わなければならない賃金をしっかり支払い、あとで紛争が発生することを未然に防止しなければいけません。
労使間の無用な紛争をなくすためにも、残業代に関する法規制をまとめておきます。十分確認してください。
■「法定労働時間」とは
労働基準法では、使用者が労働者を働かせることができる労働時間は、原則として一週間で40時間、かつ一日8時間(法定労働時間)までと定められています。
ただし、36協定を締結し、労働基準監督署長に届け出れば、労働者が法定労働時間を超えて働いても労働基準法には違反しません。
36協定とは、労働者の過半数が加入する労働組合があればその労働組合と、そのような労働組合がない場合には、労働者の過半数を代表するものと書面で締結した協定のことをいいます。労働基準法36条に基づくためこう呼ばれています。
なお、労動者が法定労働時間を超えて働かせた場合には、適用除外を除き労働者に割増賃金を支払わなくてはなりません。適用除外となるのは、管理監督者や、農業・畜産・水産業に従事する者、監視継続労働従事者です。
■「割増賃金」とは
法定労働時間外の勤務をさせたときに必要となるのが割増賃金です。
労働基準法における労働時間とは、使用者が労働者を指揮命令下においている時間です。
しかし、就業規則や労働協約に定められている、合意で決めているといった理由だけで、