内部監査のスケジュールや問題点を利用した不正会計、また社内の管理体制や人事制度上の不備に付け込んだ不正会計の事例があれば教えてください。
【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/
企業では不正を防止するために、内部監査部門を設置して毎年、内部監査を実施します。
この内部監査は公認会計士の会計監査と異なり、会社の業務が適法に運営されているか、自社の規程・ルール通りに為されているかなどを監査するものです。
会社の従業員からすると、時には面倒に思うこともあるでしょう。
また、内部監査のスケジュールを逆手にとって不正の発覚を逃れようとする人が出てもおかしくありません。
今回、紹介する事例は、その内部監査のスケジュールを利用して、監査直前に関連書類を改ざんするという残念な結果を招いた事例です。
不正実施会社は、道路舗装の老舗大手企業です。
不採算工事を隠ぺいするために、不正や売上の水増し行為が行なわれました。
不正手段
主な不正の手段は次のものです。
1.取引業者3社を利用して、原価の付替え及び請求の繰延
2.自ら管理する工事の変更請負金額の架空計上
これだけであれば、よくある関係証憑の偽造による不正事例ですが、本件で驚くのは次の事実です。
3.不正実施従業員が、自ら管理する工事請負金額の架空計上を行なうとともに、発覚を逃れるために自らの金銭で代金の支払いを行なっていた
請負金額の架空計上発覚を逃れるために自らの懐から不正代金を支払うという事例は、なかなかお目にかかれないものです。
不正の原因分析
このような不正処理が行なわれた原因として、報告書では次の点が述べられています。
①人事制度上の問題点
不正行為者が長年にわたり一事業所に勤務しており、異動がなく、閉鎖的な組織が作られていたこと。
②内部管理体制における問題点
ⅰ.工事の受注金額の変更が不正行為者の報告のみで実施され、顧客から受領すべき「注文書」や顧客への確認がなされていなかったこと。
ⅱ.工事管理について、不正行為者に仕事が集中し、内部統制の原則である複数のチェックが実施されなかったこと。
③内部監査上の問題点
社内監査が事前通知の上で実施されていたため、監査前に関連書類を改ざんする猶予を与えてしまったこと。
最近では