労働契約(労働条件)が異なる会社同士が合併する場合、 会社と従業員の労働契約はどうなる?


同業他社との合併を計画していますが、労働契約(労働条件)が異なる会社同士が合併する場合、従業員との労働契約はどのようになるのでしょうか?

解説

M&A(エムアンドエー)とは「Mergers」(合併)と「Acquisitions」(買収)の略で、合併には「吸収合併」と「新設合併」があります。
吸収合併は一方の法人格のみを残し、他方の法人格を消滅させたうえ、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後に存続する会社に承継させる手法です。
他方、新設合併はすべての法人格を消滅させて、合併により新たに設立する会社に承継させる手法です。

また法律上の区分とは別に合併の目的よって、業績不振の会社の救済措置的な意味合いの強い救済型と、企業戦略的な意味合いの強い戦略型に分けることもあります。

人員削減の際、整理解雇を実施するには裁判例上、一般的に以下の「整理解雇の4要件」が充たされていなければなりません。

1.人員整理の必要性
2.解雇回避努力義務の履行
3.被解雇者選定の合理性
4.手続きの妥当性

救済型合併の場合、存続会社の労働条件に統一されるのが通例ですが、戦略型合併の場合は両社の労働条件のすり合わせ、平準化が行われることになります。ここで問題となるのは、労働条件の不利益変更についてです。

判例では、特定又は一部の組合員をことさら不利益に扱うことを目的とするなど労働組合の目的を逸脱して協約が締結されたという事情がなければ規範的効力(労働組合法16条)が認められるとしました。(判例を参照)

つまり、労働条件を定めた労働協約が締結されている場合、労働協約を改定するにはまずは労働組合と協議をする必要があり、そこで改定された労働協約は特別な事情がない限り有効なものと認められることになります。

なお、このような労働条件変更の問題は、合併前から当然予測されることですので、可能な限り合併前から、各社で労働条件の変更を実施し、その変更に従業員の大多数が同意しない場合は、会社解散や整理解雇の問題を含めて議論するのもひとつかと思われます。


判例

「朝日火災海上保険(石堂・本訴)事件」「最高裁判決 平成9年3月27日 労判713号27頁」


概要

原告である労働者X氏は、A社の鉄道保安部に雇用され業務していたが、昭和40年に同部がB社に引き継がれることとなった。それに伴いX氏はB社の労働者となった。

当所、A社の労働条件はB社にそのまま受け継がれるとのことだったが、そのため、もともとのY社の労働者との間に労働条件の格差が生じてしまった。
そこでY社は同社の労働者で組織されるC労働組合と労働条件の統一についての交渉を続けた。

その結果、就業時間、退職金、賃金制度などについては昭和47年までに統一することができたが、定年年齢については合意が成立しなかった。
A社出身者は満63歳、B社出身者は満55歳で格差があるままの状況が続いたが、B社の経営難が表面化し、状況が動き出した。

再び交渉が行われ、B社とC組合の間で定年年齢を57歳とすることと、退職金計算方法の変更が決定された。
X氏は労働条件引き下げに反対し、従前の労働条件の適用を受ける地位の確認等を求めて提訴した。

最高裁は、X氏の受ける不利益は決して小さいものではないが、当時のB社の経営状態や労働協約に定められた合理性を考えれば、特定又は一部の組合員をことさら不利益に取り扱う目的で締結されたなど、労働組合の目的を逸脱して締結されたものとはいえず、その規範的効力を否定すべき理由はないとして原告の訴えを棄却した。

複数の会社が法的に一つになることを合併といいます。1社を存続させて他の会社を消滅させることを吸収合併といいますが、その際、消滅する会社の権利義務を包括的に承継するので、消滅する会社の労働者の労働契約関係もそのまま存続会社に承継されます。

つまり法律的には、合併によって消滅する会社の労働者の労働契約上の地位が失われたり、労働条件が変更されることはありません。

しかし、合併後に人員削減を実施することも珍しくなく、労働条件が変更されることも多いのが実情です。その際、まずは希望退職者募集をして、削減目標に届かない場合は整理解雇を検討するという流れになります。

労働条件に関しては、1つの会社に複数の労働条件による社員が併存している状態は人事管理的に困難や混乱が生じることがあり、さらには労働者間に待遇面での不公平感が生まれ、仕事への意欲に悪影響を及ぼす可能性もあります。

 

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