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夫の遺産を相続できない妻がいるって本当?

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動画解説はこちら



夫が亡くなった場合、その遺産を相続するのは一般的には妻と子供たちです。

では、子供のいないご夫婦の場合はどうでしょうか?

「うちには子供がいないから遺産相続が簡単、ラクでいい」
こんな話を聞くことがあります。

確かに、一見ラクそうですが、果たして法律的には簡単なのでしょうか?

ある主婦の方の体験から、遺産相続について法的に解説します。

問題の核心をチェック

ある主婦の方(仮にAさんとします)が夫を亡くしました。

何はともあれ葬儀を行い、一息ついて49日が過ぎた頃でした。
義理の姉とその息子がやって来て、「遺産を相続する権利が自分たちにもある」と言いました。

突然のことで、Aさんは気が動転しました。
そして、疑心暗鬼になりました。
「本当だろうか……」

Aさんは、それまで相続のことなど考えてもいなくて、勉強もしていませんでした。
夫の遺産は自分が相続するものだと勝手に思っていました。
というのも、2人には子供がいなかったからです。

義理の姉とは仲が良かったわけでもなく、心情的には夫の遺産を分けるのが嫌でした。

ちなみに夫の遺産は2人で住んでいたマンションとわずかな預金のみ。夫の父母は数年前に亡くなっています。
遺言書は見つかっていません。

リーガルアイ

個人が亡くなった場合、その人は「被相続人」となり、権利義務
を「相続人」が承継します。

ところで「民法」では、相続人の順位が決められています。

相続人の順位

〇第1順位:子(直系卑族)
※養子・非嫡出子・胎児を含みます
※子が死亡している場合は、孫や曾孫に代襲相続されます

〇第2順位:父母(直系尊属)
※父母が死亡している場合は、祖父母が相続人になります
※第1順位の人がいない場合のみ、相続人になります

〇第3順位:兄弟姉妹
※第1・第2順位の人がいない場合のみ相続人になります
※兄弟姉妹が死亡している場合は、甥・姪が相続人になります

〇配偶者:夫または妻
※配偶者は、つねに相続人になります
※法律上の婚姻関係にある者で、内縁関係では相続人にはなりません

Aさんのように子供のいない夫婦で旦那さんが亡くなった場合、まず配偶者であるAさんは相続人になります。

次に、子供はいないため、夫の父母に相続人である権利がありますが、どちらも亡くなっているので、第3順位の夫の姉に相続権が発生することになります。

相続の割合

父母が健在なら、Aさんの法定相続分は3分の2、親が3分の1となりますが、今回のケースでは、義理の姉にも相続権があります。
法定相続分は、Aさん4分の3、姉が4分の1となります。

ここでは仮に、マンションの評価額2,500万円、預金300万円として、義理の姉とお金で解決すること前提で考えてみます。
すると、Aさんが義理の姉に支払わなければいけない金額は、法的には700万円になってしまいます。

もし、Aさんに十分な預貯金がない場合は、マンションを売却するしかなくなってしまいます。
すると、生活基盤である住まいを失い、Aさんの生活は一気に不安定な状況になってしまいます。

果たして、こうした事態を回避する方法はあるのでしょうか?

遺産相続で妻が有利になる方法

①「法定相続人に相続放棄してもらう」
被相続人が死亡すると自動的に相続が開始されますが、相続人は、自分が望まないのに無理矢理相続する義務があるわけではありません。
また、被相続人に多額の借金がある場合、借金も相続されますので、なんとか相続を逃れたい、という場合もあるでしょう。
そんな時、相続人は「相続放棄」をすることができます。

相続放棄をすれば、初めから相続人ではなかったことになります。
今回の場合、義理の姉が始めから相続人でなかったことになり、Aさんが全ての財産を相続することができます。

【相続放棄の関連記事】
相続放棄について確認すべき3つの注意点

②「遺産分割協議をする」
法定相続人全員が合意すれば、遺産は法定相続分のとおりにきっちり分割する必要はありません。
こうした話し合いを「遺産分割協議」といいます。

Aさんの場合は、法定相続人の1人である義理のお姉さんと話し合って、支払える限度のお金の相続で我慢してもらうか、マンションの持分の一部を相続してもらって、そのマンションの分割を求めない旨の合意をすることも考えられます(ただし、5年が上限です)。

③「遺言書を遺しておいてもらう」
遺言を遺しておけば、財産の分け方を本人の意思で決めることができます。

「自筆証書遺言の書き方」の詳しい解説はこちら
⇒「万が一に備える!自筆証書遺言の書き方とは?」
  https://myhoumu.jp/how_to_yuigonsho/

遺産相続の遺留分とは

ただし、法定相続人には最低限の財産を受け取る権利である「遺留分」が認められているので注意が必要です。

たとえば、子供が2人いる場合、夫が「自分の全財産を妻に相続させる」という遺言を遺しても、子供は「遺留分」を受け取ることができます。
この場合、遺産等の全体の2分の1が遺留分となり、そこに子供の法定相続分である4分の1を掛けた8分の1ずつが子供たちの遺留分となります。

ところが、兄弟姉妹や甥・姪が法定相続人になる場合は遺留分が認められないので、

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