世界中で話題となっている「ポケモンGO」は、スマホのGPS機能による現在地情報を使ってポケモンを捕まえるARゲームです。
この「ポケモンGO」では、これまでに過失運転致死傷罪や道路交通法違反やなどの事件が起きていますが、今回はまた新たな法律違反が起きる可能性があるということについて解説します。
事件はこうして起きた
2016年、人気のオンラインゲーム「パズル&ドラゴン」(パズドラ)に関わる行為で逮捕や書類送検されるという事件が相次ぎました。
「ポケモンGOでも登場「ずる」する道具、使うと罪?」(2016年8月18日 朝日新聞デジタル)
2016年6月15日、チートツールを作成し無償で配布したとして、神奈川県警は広島市の大学3年生(21)を著作権法違反の疑いで逮捕した。
さらに、チートツールを乱用してゲームメーカーの業務を妨害したとして、男4人を偽計業務妨害の疑いで書類送検した。
問題になったのは、「チートツール」(CT)というゲーム攻略のために「ずる」をする道具のこと。
「パズドラ」とは、パズルで対戦しながら自分のモンスターを育てる無料のゲーム。
120円前後のアイテムを購入すれば、より早く強くなれるという。
しかし、容疑者が作成したチートツールをアイテムとして使うことで一気に無敵状態にすることができるため、40万回以上もダウンロードされていた。
ゲームメーカーは、ユーザーにチートツールを使われることで、課金の機会が失われること、またランキングで競っているゲームプレーヤーの間で不公平感が生まれることでユーザーのゲーム離れを起こしかねないため、深刻な被害を受けているという。
これまで、ゲームメーカーは何度も対策を講じてきた。
しかし、その度にさらに改良して、技術を誇示するチートツール制作者がいるために、いたちごっこ状態が続いているようだ。
警察はサイバーパトロールを行っているが、チートツールはゲーム上の問題のため発覚しにくいという特徴があるという。
そうした事態を背景に、神奈川県警は取り締まりについて慎重に検討をし、メーカーの防御プログラムをかいくぐるプログラムを開発、配布したとしてチートツール作成者を著作権法違反容疑で逮捕。
さらには、乱用に歯止めがかかっていないことから、使用者を偽計業務妨害罪で書類送検したようだ。
また、「ポケモンGO」はスマホのGPS機能による現在地情報を使ってポケモンを捕まえるゲームであることから、GPSデータを改変するチートツールがあれば、家にいながら世界中のポケモンを捕まえやすくなる。
そのため、「ポケモンGO」用のチートツールも既に登場しているようで、ユーザーはゲームメーカーが提供しているポケモンを捕まえやすくする有料アイテムを購入する必要がなくなってしまうという事態が起きかねない。
神奈川県警は、「1回のチート行為でも罪に問われる可能性がある。絶対に手を出さないで」と呼び掛けている。
リーガルアイ
この事件では、チートツールを使用した男4人が偽計業務妨害の疑いで書類送検されています。
「刑法」
第233条(信用毀損及び業務妨害)
虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
真実ではないウソやデマを不特定多数の人に広めたり、偽計(だますこと)を用いて人の信用を損なったり、人の業務を妨害すると、「偽計業務妨害罪」になる可能性があります。
正規のアイテムではない、チートツールという偽のアイテムを用いて、容疑者らはゲーム制作会社の業務を妨害したということでしょう。
ところで、本件においては過去の例からも「電子計算機損壊等業務妨害罪」の適用も考えられます。
第234条の2(電子計算機損壊等業務妨害罪)
人の業務に使用する電子計算機若しくはその用に供する電磁的記録を損壊し、若しくは人の業務に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与え、又はその他の方法により、電子計算機に使用目的に沿うべき動作をさせず、又は使用目的に反する動作をさせて、人の業務を妨害した者は、5年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
次に、「著作権法」について見てみます。