子供が他の子供を脅してケガを負わせるという事件が起きました。
この場合、法的責任は誰にあるのでしょうか?
子供本人の責任が問われるのでしょうか?
それとも親の責任になるのでしょうか?
事件はこうして起きた
「小2脅され飛び降り重傷 上級生の親に賠償命令」(2016年7月19日 産経新聞)
2013(平成25)年、学校でのトラブルが原因で、上級生の少女が女児(当時8歳)を東京都江東区の9階建てのマンション屋上(高さ約26メートル)に誘い出し、「飛び降りないと殺すぞ、ここから落ちて死んでしまえ」と脅したところ、女児が飛び降り、足や胸の骨を折るなどの重傷を負った。
女児と両親は、上級生の両親に対して計3000万円の損害賠償を求めて提訴。
訴訟の判決では、上級生の少女には聴覚障害があり、両親は学習支援の専門機関に継続的に通わせ、熱心に教育していたと認めた。
しかし、少女が過去にも別の児童に暴力行為をしたことがあったことから、「問題行動の傾向を把握し、さらに専門家に相談すべきであり、対応が不十分だった」と指摘し、加害少女の両親に約1000万円の損害賠償を命じた。
リーガルアイ
子供が相手の子供にケガを負わせた場合の法的責任は誰にあるのでしょうか。
民法で関連する条文を見てみましょう。
第712条(責任能力)
未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。
未成年者の損害賠償責任について、民法では、その未成年者に物事の是非善悪を理解する能力がある場合には、その未成年者本人が賠償義務を負うことになりますが、その能力がない場合には賠償の責任を負わないとされています。
ちなみに、責任能力の有無の境界線は、11~12歳あたりとされるため、通常この年齢より下の子供は責任能力が否定されます。
次に、親の責任について条文を見てみましょう。
第714条(責任無能力者の監督義務者等の責任)
1.前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
つまり、今回の訴訟では、事件当時の加害少女は9歳、もしくは10歳と思われるため、責任は両親にあると判断されたということになります。
ところで、