相手に暴言を吐くだけでも逮捕される!?軽犯罪法を解説
周囲の人に迷惑をかける厄介な人がいます。
こうした人には、どう対応したらいいのでしょうか?
法的な対処法はあるのでしょうか?
目次
暴言に関する問題の核心をチェック
電車の中で酒に酔って他の乗客にからむ、飲食店で暴れる、相手に暴言を吐く、大声でわめくなど、はた迷惑な言動をする人間がいる。
インターネット上の投稿で、バスの中で他の乗客が通れないように通路をふさぐなどの迷惑行為を何年も続けている乗客を撮影した動画が話題になっていた。
たとえ暴力を振るわなくても、暴言を吐いたり、相手に対して迷惑な行為をするだけで逮捕される可能性はあるのだろうか?
迷惑行為については、程度や状況などによって、さまざまな罪に問われる可能性があります。
まずは、「軽犯罪法」があげられます。
軽犯罪法
第1条
左の各号の一に該当する者は、これを拘留又は科料に処する。
五 公共の会堂、劇場、飲食店、ダンスホールその他公共の娯楽場において、入場者に対して、又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、飛行機その他公共の乗物の中で乗客に対して著しく粗野又は乱暴な言動で迷惑をかけた者
ちょっとしたはずみで人が犯してしまうような軽微な33種類の秩序違反行為について規定している法律が軽犯罪法です。
違反をした場合は、拘留もしくは科料が科されます。
・拘留とは、受刑者を1日以上30日未満で刑事施設に収容する刑罰
・科料とは、1000円以上、1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰
軽犯罪法5号のポイント
軽犯罪法5号は粗野・乱暴の罪とも呼ばれますが、ポイントは次の2点です。
①公共の場や施設、乗り物とは?
②人に迷惑をかける、著しく粗野又は乱暴な言動とは?
【公共の場や施設、乗り物とは?】
公共というと、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?
個人所有ではなく、国や地方自治体などが所有、管理している場所や施設、または鉄道やバスなどの交通機関などを「私」や「個」に対する「公」、英語の「パブリック」ととらえる人が多いかもしれません。
もちろん、条文にもあるように、それらは公共の場や施設、乗り物ですが、公共の法的な定義は少し意味合いが違ってきます。
公共とは、不特定の、かつ多数の人が自由に出入り、利用できる性質のものをいいます。
たとえば、映画館などの劇場や飲食店、さらにはパチンコ店やゲームセンター、ボウリング場などの娯楽施設も公共の場になります。
公共の乗り物は、電車やバス、船、飛行機の他にもケーブルカーやロープウェイ、エレベーターやエスカレーターなども当てはまります。
【著しく粗野で乱暴な言動とは?】
粗野とは、言動が下品で荒々しく、洗練されていないことです。
では、著しく粗野な言動とは具体的にどのようなものをいうのでしょうか?
ここでは、軽犯罪法よりも刑罰の重い「刑法」と比較して考えてみます。
刑法 第222条(脅迫)/第223条(強要)
第222条(脅迫)
1.生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
第223条(強要)
1.生命、身体、自由、名誉若しくは財産に対し害を加える旨を告知して脅迫し、又は暴行を用いて、人に義務のないことを行わせ、又は権利の行使を妨害した者は、3年以下の懲役に処する。
たとえば、「殺すぞ!」、「殴ってやる!」などのように相手に危害を加えることを告げるだけでも脅迫罪は成立します。
また、相手を脅して土下座をさせる、謝罪文を読み上げさせる、無理矢理に引っ越しをさせる、辞職願を書かせるというように、危害を加えることを告げて相手に義務のないことを行わせると強要罪に問われる可能性があります。
詳しい解説はこちら
「ゲーム仲間を脅迫した男女が強要罪で逮捕!?」
刑法 第204条(傷害)/第208条(暴行)
次に、「傷害罪」と「暴行罪」について考えてみましょう。
第204条(傷害)
人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
第208条(暴行)
暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
法的には、人の身体に向けた「不法な有形力の行使」が暴行と定義されるのですが、わかりやすく表現するなら、相手が傷害を負えば傷害罪になり、傷害を負わなければ暴行罪になるということになります。
詳しい解説はこちら
「抜くと傷害罪、切ると暴行罪になるもの何?」
以上のことから、著しく粗野又は乱暴で人に迷惑をかける言動とは、直接相手に危害を加えてしまったり、周囲の物を壊すまではいかずに、相手にからんだり、暴言を吐いたり、大声を出して周囲の人に迷惑をかけたり、相手を傷つける意思なく物を投げたりなどの比較的軽いものということになります。
人の業務を妨害しても犯罪になる?
なお、人に迷惑をかける言動が相手の業務を妨害した場合は、威力業務妨害罪になる可能性があります。
刑法 第234条(威力業務妨害)
威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
※前条とは、第233条(信用毀損及び業務妨害)のこと。
威力業務妨害罪では、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金を科せられます。
詳しい解説はこちら
「いたずらでは済まない!悪ノリ投稿は犯罪になる?」