当社では6月の賞与支払時に、4月中に退職する社員に対してもこれまでの貢献を踏まえ賞与を支払うことを予定しています。
しかし、初めてのケースということもあり、社会保険料や所得税だけでなく、それ以外に注意しなければならない事項がよくわかりません。
どのような点に注意するべきでしょうか?
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
退職者に賞与を支払う場合、まず考えなければならないのは賞与の支給日とその支給額が確定されたかということです。
社会保険料は資格喪失月の前月までに支給された賞与についてはかかりますので、仮に4月30日退職であるならば資格喪失日は5月1日となり、資格喪失月も5月となるため、この場合社会保険料の天引は行ないません。
また、社会保険については賞与を支給した場合、「賞与支払届」を日本年金機構等に提出しなければなりませんが、退職後に支給する予定ということなので今回のケースではこの方の分を提出する必要はありません。
続いて、雇用保険料の徴収について確認をします。
雇用保険は社会保険とは異なり、仮にこの方の在職中に既に賞与の支払いが確定していたのであれば天引の必要が出てきます。
しかし、4月末退職時点で6月に支払う賞与の額が確定していたとは通常考えづらいので、雇用保険料の天引も行なわないということになるでしょう。
最後に所得税の徴収について確認をします。
賞与に係る所得税は「賞与を支給した月の前月の給与」を基準に計算されます。
今回のケースの場合だと「賞与を支給した月の前月の給与」がありませんので、通常と異なる計算方法により所得税を算出することとなります。
その計算方法は次のとおりです。
1.(賞与から社会保険料等を差し引いた金額)÷6
2.上記1の金額を「月額表」に当てはめて税額を求める。
3.上記2の税額×6=賞与から徴収する源泉徴収税額となります。
なお、税率は通常であれば「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を会社に提出していると思いますので「甲欄」で計算しますが、退職後に支払う場合の税率は「乙欄」になります。
ただし、