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株式交付制度および株式対価M&Aを促進するための措置の概要解説

会社法の改正により、「株式交付制度」が組織を再編成する手段の新たな選択肢として追加され、税制面においては「株式対価M&Aを促進するための措置」が創設されました。

本記事では、株式交付制度および株式対価M&Aを促進するための措置の制度概要、制度を利用するメリットと注意点について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

会社法における株式交付の概要

株式交付とは、株式会社が自社の株式を対価に、対象会社を子会社化する制度です。

事業再編の円滑化を促進することを目的として創設され、株式対価M&Aが会社法上の再編類型の1つとして位置付けられました。

株式交付は株式を交付する側の機関決定が不要であり、交付後に親会社になる企業と子会社になる企業間で契約関係を要しないなど、手続き面が合理化されているのが特徴です。

従来は株式対価M&Aを行う際、株式発行に対する規制が障害となっていましたが、本制度が施行されたことでM&Aが以前よりもスムーズに行えるようになりました。

株式交付と株式交換の相違点

株式交付と似た組織再編の手段として株式交換がありますが、双方の制度には大きく2つ相違点があります。

1点目は、買収規模の違いです。

株式交換は100%買収のみを対象としているのに対し、株式交付は50%超から100%の買収を対象としているため、対象会社を部分的に買収して子会社化することもできます。

2点目は、手続きの簡便性です。

株式交換を行う場合には、対象会社が組織再編の当事者となるため、株主総会決議が必要ですが、株式交付については対象会社が再編の当事者になりませんので、手続きが買収会社と対象会社の株主との間で完結します。

株式対価M&Aを促進するための措置の概要

「株式対価M&Aを促進するための措置」は、令和3年度税制改正で創設された制度です。

M&Aに応じた対象会社の株主は、株式を手放した際に譲渡損益の計算をすることになりますが、株式対価M&Aを促進するための措置を適用すれば、譲渡損益の課税を繰延べることができます。

本制度は株式交付を利用したM&Aを促進する目的があるため、特例を適用するための事前認定が不要であり、総額の20%までであれば、対価の一部に現金を用いる(混合対価)ことも認められています。

ただし、課税の繰延べになる部分は株式を交付した部分のみであり、現金等の交付対価が総額の20%以下であったとしても、現金部分は課税対象となるので注意が必要です。

<株式対価M&Aを促進するための措置のポイント>
・事前認定不要
・恒久的な措置
・総額の20%まで現金を対価に用いることが認められている

株式交付制度を活用して組織再編成を行うメリットと注意点

株式交付制度は、親会社になる会社だけでなく、子会社の株主にもメリットがある制度です。

完全子会社化を行うリスクを回避できる

株式交付は株式交換とは異なり、対象となる会社を完全子会社化する必要はありません。

子会社化する会社の株式を50%超取得する必要がありますが、株式を100%取得することは求められていませんので、組織再編成時に子会社の株主と対立するトラブルを抑制することができます。

資金調達にかかる負担を軽減できる

M&Aを実施するためには多額の資金を要しますが、株式交付制度は完全子会社化が不要ですので、資金調達の負担は株式交換よりも少ないです。

調達すべき資金を抑えることができれば、M&Aを実施するタイミングを調整しやすくなるため、効果的かつ効率的に組織再編成を行えます。

売手の株主に税制上の優遇措置が設けられている

M&Aに応じる株主は、株式の譲渡損益を計算することになり、譲渡益が発生すれば税負担を強いられることになります。

しかし、「株式対価M&Aを促進するための措置」の要件を満たしていれば、課税を繰り延べることできますので、税金の支払いが組織再編成の妨げになることを回避できます。

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