IPOのための不正売上計上事例





株式の新規公開(IPO)に絡んで実行された不正会計事例があれば教えてください。

【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/


昨今、株式の新規公開(IPO)件数が伸びています。
リーマンショック後は年間で20社もなかったIPOですが、ここ数年は毎年80社~90社前後が上場し、市況をにぎわせています。

しかし、IPOは簡単ではありません。
特に近年では、予算と実績の管理が厳しく求められます。
直前期や上場申請期での予算進捗が芳しくないと、上場時期を見送るケースもあります。

そこで今回は、上場申請期での売上・利益を確保する目的から不正売上が計上されていた事例を紹介します。

会計における工事進行基準と工事完成基準の違いとは?

不正が行なわれていたのは、工場や浄水場の内部装置や水処理装置の製造・販売会社です。

この会社、売上についての会計基準を次のように定めていました。

「当事業年度末までの進捗部分について成果の確実性が認められる工事契約については工事進行基準を適用し、その他の工事契約については工事完成基準を適用」


工事進行基準 工事収益総額、工事原価総額、及び決算日における工事進捗度を合理的に見積もり、これに応じて当期の工事収益及び工事原価を認識する方法。
工事完成基準 工事が完成し、目的分の引渡しを行なった時点で、工事収益及び工事原価を認識する方法。

会計は企業の実態を表すものです。
そのため、工事の進捗部分に「成果の確実性」が認められる限り工事進行基準が適用され、それ以外の場合には工事完成基準が適用されることになります。

ここで問題になるのが、成果の確実性です。
成果の確実性が認められるためには、具体的には次の3つの視点で見ていきます。


①工事収益総額
②工事原価総額
③決算日における工事進捗度


これらすべてについて、信頼性ある見積もりができることが必要です。
ひとつでも信頼性ある見積もりができなければ成果の確実性が認められないとされ、工事進行基準は適用できません。

工事の進捗に応じて売上や費用を認識するのですから、工事の収益総額や原価の総額に加え、その工事進捗程度をしっかり見積もることができないのであれば、工事進行基準を採用することができないのは当然です。

工事進行基準が採用できず工事完成基準を採用すると、工事が完成して引き渡した時に売上や原価を認識します。
となると、工事進行基準で売上予算を立てていた企業は当初見込んでいた売上が計上できないことになります。
これが上場申請期であると、上場時期に影響することは必須です。

会計基準への理解の浅さが招いた不適切な会計処理

今回、不正を実行した会社は上場申請期に外国政府が関係する浄水場プロジェクトに関与していました。
しかし、当該政府や州による工事入札が実施されず、浄水場プロジェクトそのものが遅延している状況でした。

そうであれば当然、「成果の確実性」を見積もることは困難なのですが、当該企業は予定していた決算期での上場のために工事進行基準を適用して売り上げを計上していたのです。

このような状況でも工事進行基準による売上を計上した理由としては、

 

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