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クロスボーダーの組織再編成に伴う税制上の注意点

国境を越えて取引を行う企業は年々増えており、組織再編についてもクロスボーダーで実施する企業が出てきています。

当事者に海外企業等が含まれる場合、課税関係が複雑化しますので、今回はクロスボーダーの組織再編成をする際の税制上の注意点について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

クロスボーダーの組織再編成とは

クロスボーダーの組織再編成は、平成19年(2007年)から解禁された三角合併に伴い可能になった、組織再編の方法です。

三角合併は、会社を合併する際に消滅会社の株主に対し、存続会社の株式ではなく、存続会社の親会社の株式を対価として交付する合併をいいます。

会社の合併は内国法人同士でなければ行うことができないため、合併に関する問題は基本的に国内で完結しますが、三角合併の場合には合併当事者だけでなく、対価として株式を交付することになる親法人が関係者として加わります。

親法人は合併の直接の当事者ではないことから、親法人が海外の法人であったとしても問題がありません。

そのため、三角合併により会社の合併が実施されるケースにおいては、結果的に海外の親法人が内国法人を子会社化することができるため、クロスボーダーの組織再編成が可能となります。

適格合併に該当する三角合併の要件

組織再編を実施する場合、原則として組織再編時に課税関係が生じることになりますが、合併等が適格組織再編成に該当する場合は、課税を繰り延べることができます。

適格組織再編成(適格合併)の要件には、完全支配関係や支配関係等に関するものがあり、合併法人と被合併法人との関係について定められている要件は、「三角合併」に該当するか否かに関係なく規定されています。

三角合併であっても、要件を満たせば適格合併として課税を繰り延べることはできますが、合併対価が合併親法人株式に限られる点には注意が必要です。

合併等に共通する要件には、消滅法人の株主等対して次に掲げる株式のいずれか一の法人の株式以外の資産が交付されないことがありますが、三角合併の場合には、次の②の株式以外の資産が交付されないことが要件となっています。

①合併法人の株式
②合併親法人の株式
(合併法人との間に当該合併法人の発行済株式等の全部を直接または、間接に保有する関係とされる一定の関係がある法人)

クロスボーダー三角合併を実施した場合の課税関係

一般的な合併とクロスボーダー三角合併では、合併法人と消滅法人(被合併法人)の株主の課税関係が異なる点があります。

合併法人に対する課税関係

三角合併を行う場合、原則としては資産を移転する際に資産を時価で売買したとみなされ、譲渡損益の課税関係が発生します。

三角合併が適格合併に該当する際は、消滅法人の資産・負債については簿価で引き継ぐことになるため、譲渡損益の課税を繰り延べることが可能です。

ただし、合併会社が海外の親会社の株式を保有していたときは、親法人株式を時価で譲渡し、その後時価で取得したものとみなされることから、組織再編時に課税関係が生じます。

消滅法人の株主に対する課税関係

消滅法人の株主が、合併に伴い消滅法人の株式を有しないこととなった場合、原則は、譲渡に係る譲渡損益を合併が行われた年の属する事業年度に計上しなければなりません。

ただし、消滅法人の株主に合併法人の株式または合併親法人の株式のいずれか一方の株式のみが交付された場合、消滅法人の株主の譲渡損益については、消滅法人の株式の譲渡対価の額を当該合併直前の消滅法人の株式の帳簿価額に相当する金額として計算することから、譲渡対価の額と譲渡原価の額が同じになります。

譲渡対価と譲渡原価が同額であれば譲渡損益は生じませんし、消滅法人の株主に交付される合併親法人の株式が外国法人の株式であったとしても、取扱いは同様です。

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