法人が贈与を受けた場合の受贈益は法人税の課税対象となりますが、贈与をした側は寄附金として一部が損金に算入できず、課税されるケースがあります。
債権者が債務を消滅させた場合、直接の贈与を受けていなくても債務免除益が課税対象となりますので、今回は法人が受けた受贈益および債務免除益に対する課税のしくみについて解説します。
【この記事の監修者】
定岡佳代税理士事務所 税理士 定岡 佳代
法人税上の受贈益および債務免除益の取扱い
法人が他者から資産を贈与(無償の譲渡)または低額で取得した場合、実際に金銭等の授受がなくとも、法人税法上はその資産の時価に相当する受贈益を計上しなくてはならず、その全額が益金の額に算入されることになります。
益金に算入される金額は、法人が贈与を受けた際はその贈与された資産の時価、低額譲渡された場合はその資産の時価と譲受価額との差額です。
また、他者から債務の免除を受けたときは、法人税法上は債務免除という経済的利益を享受したと考えますので、免除を受けた債務の金額を債務免除益として計上し、その全額が益金の額に算入されることになります。
一方、贈与等を行った側では、贈与等を受けた側で計上される受贈益に対応する金額が寄附金として計上されます。寄附金は法人税法上、その寄附金の性質により分類され、所定の計算式より寄附金の一部が損金不算入となります。
法人に対して贈与等を行った際の取扱い
法人に対して贈与や低額譲渡、債務免除を行った場合、その贈与等を行った側が個人・法人のどちらに該当するかによって扱いが異なります。
贈与等を行った側が法人の場合、贈与・低額譲渡を受けた側における受贈益に相当する金額を寄附金、債務免除を受けた側における債務免除益に相当する金額を寄附金または貸倒損失として取り扱うのが原則です。
寄附金または貸倒損失は、法人税法上の別段の定めがあるため、一部損金に算入されない場合がありますので注意しましょう。
贈与等を行ったのが役員等の個人の場合、法人に対する「みなし譲渡」として譲渡所得に係る所得税が課されます。
みなし譲渡は個人が無償または著しく低い価額で資産を譲渡した際、その資産をその譲渡時の時価で譲渡したとみなして税額計算を行うものです。
法人に対して低額譲渡をした場合の「著しく低い価額」は、資産の時価の2分の1に満たない金額ですので、譲渡価額が時価の2分の1以上であればみなし譲渡には該当しません。
低額譲渡の場合における資産の時価と譲渡価額との差額については、譲受者の法人は受贈益、譲渡者が法人の場合には原則寄附金として扱われます。
完全支配関係のある法人間の受贈益・寄附金の取扱い
完全支配関係がある法人間で贈与等が行われた場合、贈与等を受けた法人では受贈益は益金の額に算入されず、贈与等を行った法人では受贈益に対応する寄附金が損金の額に算入されないこととなります。
ここで完全支配関係とは、「一の者が法人の発行済株式若しくは出資(その法人が有する自己の株式又は出資を除きます。以下「発行済株式等」といいます。)の全部を直接若しくは間接に保有する一定の関係又は一の者との間にその一定の関係がある法人相互の関係」とされており、いわゆる100%親子関係や100%親子関係にある親を持つ兄弟関係になる会社同士等のことをいいます。
受贈益のうち益金不算入となる額は、金銭の贈与の場合はその金銭の額、金銭以外の資産の贈与の場合はその資産のその贈与時の価額、また経済的利益の無償の供与の場合はその経済的利益のその供与時の価額となります。
また寄附金とは、寄附金・拠出金・見舞金などの名義で行われる無償の供与が対象になりますが、実質的に広告宣伝や見本品の費用、その他これらに類する費用ならびに交際費、接待費および福利厚生費となるものは除かれます。
広告宣伝用資産等の受贈益の取扱い
販売業者等がメーカー等(製造業者等)から、メーカーや製品の名称入りの資産を無償または低価格で譲渡されることがあります。このとき販売業者等では、その資産のメーカー等での取得価額から販売業者等がその取得のために支出した金額を控除した金額を経済的利益として、取得日の属する事業年度の益金に算入しなければなりません。
(専ら広告宣伝の用に供される、広告宣伝用の看板やネオンサインなどは除かれます。)
ただし、取得資産が次に掲げるような広告宣伝用のものである場合には、メーカー等の取得価額の3分の2に相当する金額から、販売業者等がその取得のために支出した金額を控除した金額を経済的利益とします。
①自動車(自動三輪車および自動二輪車を含む。)のうち、車体の大部分に一定の色彩を塗装して製造業者等の製品名または社名を表示し、広告宣伝を目的としていることが明らかなもの
②陳列棚・陳列ケース・冷蔵庫・容器のうち、製造業者等の製品名または社名の広告宣伝を目的としていることが明らかなもの
③展示用モデルハウスのように、製造業者等の製品の見本であることが明らかなもの
たとえば、販売業者がメーカーから社名入りの車両(取得価額150万円)を無償で譲り受けた場合、150万円×2/3=100万円を取得価額として資産計上するとともに、同額の受贈益を計上し益金の額に算入することとなります。
ここで、経済的利益の額が30万円以下と少額である場合には経済的利益はないものとします。(同一のメーカー等から2以上の資産を取得した際の金額判断は合計額で行います。)
また、広告宣伝用の看板やネオンサインなど、専ら広告宣伝の用に供される資産を取得した場合も、経済的利益はないものとします。