法人は個人事業主に比べて税務調査を受ける確率が高いですが、10年以上税務調査を受けていない法人も存在します。
税務調査を回避するためには正しい方法で対策を講じなければならず、対策のしかたを誤ると逆に税務調査の対象になりやすくなるので注意が必要です。
本記事では、税務調査が10年以上来ない法人の特徴と、税務調査の対策を講じる際の注意点について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
税務調査を受ける確率は5年間で17.8%
国税庁の「令和4事務年度法人税等の調査事績の概要」によると、国税当局が平成30年から令和4年までの5年間において、法人税・消費税の税務調査で納税者と接触した割合は17.8%です。
毎年法人の4%前後は調査対象となっていますが、数字上では25年間に1度しか税務調査を受けない計算です。
一方で、税務調査を受ける確率は法人の業種や事業規模によって異なるため、実際に調査を受ける確率は数字よりも高く、税務調査を受けた数年後に再び調査対象となる法人も少なくありません。
反対に、10年以上事業を続けていても税務調査を1度も受けたことがない法人や、2度目の税務調査が到来していない法人もありますので、年4%の数字は目安程度にお考えください。
税務調査の対象者として選定されにくい法人の特徴
どんなに対策を講じても税務調査を100%回避するのは難しいですが、次に該当する項目が多い法人ほど調査は受けにくくなります。
適正申告を行っている
国税当局は、税務調査で申告誤りを指摘することを主要な目的としているため、提出した申告書の内容が正しければ、調査優先度は下がります。
申告内容に誤りがあれば、事業規模の大小にかかわらず調査対象者として選定されやすいので、適正な申告書を作成することが調査対策としては最も効果的です。
申告内容の確認や、納税者を牽制する目的で調査が行われることもありますが、申告内容が正しければ税務調査を受けたとしても、追徴税額が課されることはありません
売上・利益の変動が小さい
会社が急成長し、売上を大きく伸ばした会社は、増加した利益の分だけ税金を納めることになります。
法人税は利益に対して課される税金なので、利益が大きくなるほど経営者は様々な手法を用いて節税を行います。
合法的な手法であれば税務署に指摘されることはないですが、脱税行為は税務調査で指摘されますし、脱税の疑いがある場合も調査対象者として選定されやすいです。
売上や利益率に大きな変動がなければ、大きな申告誤りや脱税が疑われる確率は低いため、調査対象者として選ばれにくい傾向にあります。
しかし、売上が前年度と同程度にもかかわらず、利益が大幅に減少しているときは、売上除外や経費の水増しが疑われやすいので注意が必要です。
過去の税務調査で申告是認となった
申告是認は、税務調査を実施した結果、申告内容に問題がなかったことを国税当局が認めることをいいます。
国税当局は増差税額が発生しやすい法人を優先的に調査しますので、税務調査で申告是認となった法人を、短いスパンで再び調査する可能性は低いです。
税務調査は受けないことが最善ですが、税務調査を受けたとしても申告是認となれば、その後に調査を受ける確率は下がりますので、税務調査で非違事項を指摘されないことも大切です。
なお、税務調査で脱税行為や申告漏れを指摘された法人は、調査終了後も税務署からマークされます。
税務署からマークされた場合、小さな申告ミスや申告内容の疑義から税務調査に発展しやすくなるため、対策を講じたとしても調査を回避するのが難しくなるので気を付けてください。