土地等を特定の住宅地造成事業等のために売却した場合、「特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(措法34条の2)」を適用できる可能性があります。
本記事では、特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除の要件および、適用する際の注意点について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除の概要
特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除(以下、「譲渡所得の1,500万円控除」)は、個人の有する土地等が特定住宅地造成事業等のために買い取られる場合において、一定の要件を満たすときは、最大1,500万円を特別控除額として差し引くことができる特例制度です。
特例対象となるのは固定資産に該当する土地等に限られ、建物や棚卸資産などを譲渡した際に適用することはできません。
同一年中に特定住宅地造成事業等のために譲渡された資産が2以上ある場合でも、本特例の特別控除額は1,500万円が上限です。
また、本特例の買取りが2以上行われた際、買取りが2以上の年にわたって行われたときは、原則最初の買取りが行われた年において行われたもの以外に対して特例を適用することはできません。
特定住宅地造成事業等のために買い取られる場合とは
特定住宅地造成事業等のために買い取られる場合は、租税特別措置法第34条の2第2項1号から25号に規定されるケースをいい、主な買い取りのケースは次の通りです。
<主な特定住宅地造成事業等のために買い取られる場合>
- ・1号
- 地方公共団体や独立行政法人中小企業基盤整備機構等が行う、住宅の建設または宅地の造成を目的とする事業用に供するためにこれらの者に買い取られる場合
- ・2号
- 収用事業を行う者(代行買収者を含む)に、収用等の対償に充てるために買い取られる場合
- ・3号
- 土地区画整理法による土地区画整理事業として行われる、一団の宅地の造成事業(一定の要件を満たすものに限る)のために買い取られる場合
- ・4号
- 公有地の拡大の推進に関する法律の規定により、地方公共団体または土地開発公社等に買い取られる場合
譲渡所得の1,500万円控除と併用適用できない特例制度
次に該当する譲渡所得の特例制度は、措法第35条を適用する部分を除き、譲渡所得の1,500万円控除と併用適用することはできません。
<併用適用できない特例制度>
- ・優良住宅地の造成等のために土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31の2)
- ・特定期間に取得をした土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(措法35の2)
- ・低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(措法35の3)
- ・特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2)
- ・特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の5)
- ・特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例(措法37)
- ・特定の事業用資産を交換した場合の譲渡所得の課税の特例(措法37の4)
- ・既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例(措法37の5)
- ・特定の交換分合により土地等を取得した場合の課税の特例(措法37の6)
地方公共団体等が行う宅地造成事業の施行者と買取者の関係性
措法第34条の2第2項1号に規定する住宅の建設または宅地の造成を行う者が、住宅の建設または宅地の造成のために土地等の買取りをする者に該当する場合、住宅の建設または宅地の造成の事業施行者と買取りをする者が異なっていても、譲渡所得の1,500万円控除を適用することができます。
<措法第34条の2第2項1号に規定される施行事業者>
- ・地方公共団体
- ・独立行政法人中小企業基盤整備機構
- ・独立行政法人都市再生機構
- ・成田国際空港株式会社
- ・地方住宅供給公社
- ・日本勤労者住宅協会