個人事業主の事業が赤字となった場合、損失申告を行うことで赤字を繰り越すことができます。
しかし、所得税の確定申告の際に第四表(損失申告用)の提出を忘れると、税制上の恩恵を受けられなくなるので注意が必要です。
本記事では、損失申告書を提出すべきケースと提出漏れによる影響、後からできる対処法について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
損失申告書(第四表)とは? 目的と重要性
損失申告書は、事業で発生した損失を繰り越し、将来の所得から控除するための書類です。
事業所得などに損失(赤字)がある場合、損益通算の規定を適用しても控除しきれない部分の金額(純損失)が生じたときは、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年分の所得金額から控除できます。
個人事業主が事業で赤字を出した場合、同年分に生じた給与所得や不動産所得などと損益通算することはできますが、赤字を翌年以降に繰り越すことは原則認められていません。
しかし、青色申告者については、一定の要件を満たすことで赤字を繰り越すことができるため、事業所得や不動産所得で赤字が発生した場合には、節税対策の一環として損失申告を行う必要があります。
損失申告書(第四表)の
提出忘れによる影響
損失申告書の提出を忘れると、赤字を繰り越すことはできませんし、翌年以降の所得から赤字を差し引くこともできません。
繰越控除を適用するには
損失申告書の提出は必須
個人事業主が所得税の申告書を作成する場合、基本的には申告書の第一表と第二表を用います。
しかし、繰越控除を適用する際は、申告書第一表・第二表だけでなく、第四表の提出も求められます。
また、繰り越した赤字を翌年以降の黒字から差し引くためには、赤字が発生した年分の翌年以降も連続して確定申告書を提出しなければなりません。
赤字は最大3年繰り越すことが可能ですが、損失が生じた年分だけでなく、その後の年分においても第四表の提出が必要となる点には注意してください。
繰越控除を適用できない
リスク
繰越控除が適用できなかった場合、翌年以降に利益が生じたとしても、本来減額されるべき課税所得が減額されず、実質的に納税額が増加する恐れがあります。
所得税は累進課税制度を採用しているため、赤字と黒字を相殺することで課税所得が小さくなり、適用税率が下がる可能性があります。
しかし、損失申告書を提出しない場合、前年以前に発生した赤字を控除することができないため、節税効果が得られません。
税務調査で繰越控除が
否認される
損失申告書を提出せず、前年以前の赤字と黒字を相殺していた場合、税務調査で指摘される可能性があります。
赤字を繰り越すには所定の申告手続きが必要であり、損失申告をしなければ黒字との相殺は認められません。
税務調査で繰越控除が否認された場合、相殺できなかった課税所得に対する税金を納めるだけでなく、加算税や延滞税のペナルティが課されることがあります。
結果として余計な税負担が生じるため、忘れずに損失に関する申告手続きを行ってください。