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中小企業投資促進税制の概要と節税に活かす際のポイント

中小企業が設備投資を行う際に活用できる「中小企業投資促進税制」は、一定の要件を満たすことで適用可能となる、実務上利用しやすい節税制度です。

本記事では、中小企業投資促進税制の概要と適用要件、そして節税効果を最大限に引き出すための活用ポイントを解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

中小企業投資促進税制とは

中小企業投資促進税制は、中小企業が一定の設備投資を行った際に、税額控除または特別償却のいずれかを選択して適用できる税制優遇措置です。

中小企業の成長や生産性向上を後押しすることを目的としているため、適用できるのは事業規模が小さい法人や個人事業主に限られます。

適用対象となる資産には一定の要件がありますが、事業者の経営状況等に応じて税額控除または特別償却を選択できるため、自社の状況に合った形で節税効果を得ることができます。

中小企業投資促進税制の適用要件

中小企業投資促進税制を適用するためには、事業者および対象資産に対する要件を満たす必要があります。

対象法人の範囲

中小企業投資促進税制を適用できるのは、青色申告書を提出する中小企業者等または中小事業者(個人事業主)です。

中小企業者とは、次のいずれかに該当する法人をいいます。

<対象法人>

  • ・資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人
  • ・資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人

 
上記の要件を満たす法人であっても、以下のいずれかに該当する場合は適用対象外となります。

  • ・同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受けている法人
  • ・2以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受けている法人
  • ・前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人

 
また、映画業を除く娯楽業や、性風俗関連特殊営業などに該当する事業を営んでいる場合も、本特例を適用することはできません。

<主な対象業種>

第一次産業
農業、林業、漁業、水産養殖業

製造・建設
製造業、建設業、鉱業

卸売・小売
卸売業、小売業

運輸・物流
道路貨物運送業、倉庫業、港湾運送業、一般旅客自動車運送業、海洋運輸業、沿海運輸業、内航船舶貸渡業

サービス業
旅行業、こん包業、郵便業、通信業、損害保険代理業、サービス業(※映画業以外の娯楽業を除く)

飲食業
料理店業、その他の飲食店業
※料亭、バー、キャバレー、ナイトクラブその他これらに類する事業にあっては、生活衛生同業組合の組合員が行うものに限る

不動産業、物品賃貸業
不動産業、物品賃貸業

除外業種(対象外)
性風俗関連特殊営業、映画業以外の娯楽業

対象資産の種類

中小企業投資促進税制の対象となる資産は、次の通りです。

<対象設備>

機械装置
1台(1基)の取得価額が160万円以上のもの

測定工具・検査工具
・1台(1基)の取得価額が120万円以上のもの
・1台(1基)の取得価額が30万円以上かつ、その事業年度の取得価額の合計額が120万円以上のもの

一定のソフトウエア
・1本あたりの取得価額が70万円以上のもの
・その事業年度の取得価額の合計額が70万円以上のもの

普通貨物自動車
車両総重量3.5t以上のもの

内航船舶
全て

上記の要件を満たす資産でも、次に該当するものは適用対象外となるので、要件を満たしているか取得前に必ず確認してください。

  • ・中古品
  • ・貸付用に供する設備
  • ・匿名組合契約等の目的である事業用に供する設備
  • ・コインランドリー業(主要な事業であるものを除く。)の用に供する機械装置のうち、管理のおおむね全部を他の者に委託するもの

特例を適用する際の手続き

中小企業投資促進税制を適用する際は、対象資産を取得し、事業の用に供した上で、確定申告を行う必要があります。

税額控除を適用する場合は、控除を受ける金額を確定申告書に記載し、その金額の計算に関する明細書および適用額明細書を添付してください。

特別償却を選択する場合は、対象設備の償却限度額の計算明細書および適用額明細書を、確定申告書に添付してください。

中小企業投資促進税制の節税効果

中小企業投資促進税制は、税額控除または特別償却のいずれかを選択して適用する制度であるため、それぞれの特徴を把握した上で適切に選択することが大切です。

税額控除の特徴

税額控除の限度額は、基準取得価額の7%相当額です。

ただし、控除できる金額には上限があり、以下の制度に基づく税額控除の合計額が、その事業年度の調整前法人税額の20%を超えることはできません。

  • ・本制度における税額控除
  • ・「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除制度」(租税特別措置法第42条の12の4)に基づく税額控除

 

税額控除限度額が、その事業年度の法人税額の20%相当額を超える場合、控除しきれなかった金額については、翌事業年度に1年間繰り越して控除することが認められます。

なお、資本金3,000万円超の中小企業は、税額控除を適用できないので注意してください。

特別償却の特徴

特別償却では、基準取得価額の30%相当額を特別償却限度額として、通常の償却限度額に加えて償却することができます。

これにより、当該資産については、普通償却限度額と特別償却限度額の合計額まで償却が可能となります。

なお、基準取得価額は原則として資産の取得価額を指しますが、船舶については、取得価額に75%を乗じた金額が基準取得価額とされます。

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