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中小企業経営強化税制の活用法:設備投資による税負担の軽減ポイント

中小企業の設備投資を後押しする税制優遇措置として、「中小企業経営強化税制」があります。

この制度は、積極的な設備投資を行う中小企業が活用できる特例であり、対象設備の範囲や節税効果を事前に把握しておくことが重要です。

本記事では、中小企業経営強化税制の概要および、対象設備の条件について解説します。

中小企業経営強化税制とは

中小企業経営強化税制は、中小企業者等が生産性向上を目的とした特定の設備投資を行う際に、税制上の優遇措置を受けられる制度です。

通常の減価償却では、設備投資の費用を法定耐用年数に応じて分割し、経費として計上します。

しかし、経営力向上計画の認定を受けた中小企業等が、対象設備を取得または製作した場合、「即時償却」または「税額控除」のいずれかを選択して適用できます。

たとえば、本制度を活用して即時償却を選択すれば、初年度に全額を経費として計上することが可能です。

また、税額控除を選択した場合は、税額から直接控除できるため、初期投資にかかる税負担の軽減が見込まれます。

中小企業経営強化税制の節税効果

中小企業は、経営状況や資金繰りに応じて「即時償却」と「税額控除」を使い分けることで、設備投資に伴う税負担を効果的に軽減できます。

以下では、それぞれの制度の特徴と節税効果の違いを整理します。

即時償却

即時償却は、設備を取得した事業年度に、取得価額の全額をその年の経費として一括で計上できる制度です。

これは、特定の要件を満たす設備投資を行った場合、通常の減価償却とは異なり、一度に全額を償却できる仕組みです。

この制度を利用することで、設備投資を行った事業年度の課税所得を大幅に圧縮でき、節税効果を高めることが可能です。

なお、中小企業経営強化税制のE類型において、建物およびその附属設備の投資を行った場合には、特別償却率が15%(一定の要件を満たした場合は25%)となります。

税額控除

税額控除は、算出された法人税額から、取得価額の一定割合を直接控除できる制度です。

控除上限は事業年度の法人税額の20%で、控除率は企業の資本金額に応じて異なります。

資本金規模により控除率が変動します。

<対象者と税額控除率>

資本金3,000万円以下の法人
10%

資本金3,000万円超~1億円以下の法人
7%

※E類型の建物およびその附属設備の投資を行った場合の税額控除率は取得価額の1%、一定の要件を満たした場合は2%

中小企業経営強化税制の適用対象法人の範囲

中小企業経営強化税制は、青色申告を行う中小企業者等を対象とした制度です。

中小企業者とは、以下のいずれかに該当する法人をいいます。

  • 資本金または出資金の額が1億円以下の法人
  • 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人
  • 協同組合など

資本金が1億円を超える企業は、適用対象外となります。

また、大規模法人の子会社なども制度の対象外となるため、事前に確認しておく必要があります。

中小企業経営強化税制の対象となる設備投資の範囲

中小企業経営強化税制を適用するには、要件を満たした設備への投資が必要です。

設備類型と対象資産の金額要件

中小企業経営強化税制には、設備投資を行う目的に応じて定められた「設備類型」があります。

類型は、次の4種類に区分され、それぞれで適用要件が異なります。

  • A類型:生産性向上設備
  • B類型:収益力強化設備
  • D類型:経営資源集約化に資する設備
  • E類型:経営規模拡大設備等

基本的な対象設備は、機械装置、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウェアで共通しています。

ただし、E類型のみ「建物およびその付属設備」も対象設備に含まれます

また、適用対象となる設備には、最低取得価額が設けられているため、設備投資を行う際は金額基準を満たすことが求められます。

<設備区分と金額基準>

機械装置
1台または1基の取得価額が160万円以上

工具
1台または1基の取得価額が30万円以上

器具備品
1台または1基の取得価額が30万円以上

建物附属設備(E類型を除く)
一の取得価額が60万円以上

ソフトウェア
一の取得価額が70万円以上(複写販売用の原本、開発研究用、サーバー用OSの一部は除外対象)

建物およびその付属設備(E類型のみ)
一の取得価額の合計額が1,000万円以上

対象外となる主な設備

以下の設備は、中小企業経営強化税制の対象外となります。

  • 中古資産
  • 貸付用資産
  • 暗号資産マイニング業に供する設備

中小企業経営強化税制の令和7年度税制改正のポイント

令和7年度の税制改正により、中小企業経営強化税制の適用期間は令和9年(2027年)3月31日まで2年間延長されました。

併せて設備類型の見直しが行われ、C類型(デジタル化設備)は廃止され、B類型の拡充措置として新たにE類型(経営規模拡大設備等)が追加されました。

E類型は、売上高100億円超を目指す中小企業を対象とした措置であり、売上高100億円超を目指すロードマップの作成など、所定の要件を満たす必要があります。

まとめ

中小企業経営強化税制は、設備投資を通じて税負担を軽減し、事業成長を後押しする有効な制度です。

中小企業は基本的に制度の対象となりますが、投資資産には一定以上の規模が求められます。

また、適用する設備類型によって要件が異なるため、制度の活用にあたっては、事前に専門家と協議したうえで、計画的に設備投資を進めることが重要です。

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