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一般試験研究費の税額控除制度|概要と節税効果・申請手順を解説

研究開発税制は、企業の税負担を軽減し、技術投資を促進する目的で創設された制度です。

「一般試験研究費の税額控除制度」は研究開発税制の一つで、要件を満たせば研究開発に要した費用を基準として法人税額を軽減することができます。

本記事では、一般試験研究費の税額控除制度の概要と節税効果、申請手順について解説します。

一般試験研究費の額に係る税額控除制度の概要

一般試験研究費の税額控除制度は、青色申告書を提出する法人が各事業年度に計上した試験研究費の額に一定割合を乗じて算定した金額を、その事業年度の法人税額から控除できる仕組みです。

適用対象期間は、解散日(合併による解散を除く)を含む事業年度および、清算中の各事業年度以外の事業年度です。

控除率は、試験研究費割合や増減試験研究費割合に応じて変動し、控除額には上限が定められています。

ただし、一定の要件を満たす場合には、控除額の上限が拡大される仕組みも設けられているため、より高い節税効果を得ることも可能です。

税額控除の控除率

一般試験研究費の税額控除制度の控除率は、「試験研究費割合」と「増減試験研究費割合」に基づいて算定されます。

控除率は最大14%で、以下のように段階的に設定されます。

<試験研究費割合が10%以下の場合>

① 試験研究費割合:10%以下(③に該当する場合を除く)
 増減試験研究費割合:12%超
 控除率:11.5% +{(増減試験研究費割合-12%)× 0.375}
 (最大14%)

② 試験研究費割合:10%以下(③に該当する場合を除く)
 増減試験研究費割合:12%以下
 控除率:11.5% -{(12%-増減試験研究費割合)× 0.25}
 (最低1%)

③ 試験研究費割合:10%以下で、設立事業年度または比較試験研究費の額が0
 控除率:一律8.5%
 (固定値)

<試験研究費割合が10%超の場合>

④ 試験研究費割合:10%超
 控除率:(上記①、②、③の控除率)+{(上記①、②、③の控除率×控除割増率(※))}
 (最大14%)

※控除割増率(10%上限):(試験研究費割合-10%)× 0.5

【用語の定義】

  • 増減試験研究費割合:増減試験研究費の額の比較試験研究費の額に対する割合
  • 増減試験研究費の額:本制度を適用する事業年度の試験研究費の額から比較試験研究費の額を減算した額
  • 比較試験研究費の額:適用年度開始日の3年前の日から、適用年度開始日の前日までの期間内に開始した各事業年度の試験研究費の合計額を、その期間内に開始した事業年度の数で除して算定した金額
  • 試験研究費割合:適用年分の試験研究費の額の平均売上金額に対する割合
  • 平均売上金額:適用年度の売上金額およびその適用年度開始日の3年前の日から適用年度開始日の前日までの期間内に開始した各事業年度(売上調整年度)の売上金額の合計額を、その適用年度およびその各売上調整年度の数で除した金額

税額控除上限額の調整要件

一般試験研究費の税額控除制度の税額控除限度額は、「調整前法人税額の25%」に相当する金額が上限額に設定されています。

ただし、一定の条件を満たす場合には加算措置の適用で、税額控除の上限額が引き上げられます

<税額控除上限額の加算措置>

① 研究開発を行う一定のベンチャー企業
 調整前法人税額 × 15%
 (加算上限:15%)

② 試験研究費割合が10%超
 調整前法人税額 ×{(試験研究費割合 -10%)× 2}
 (加算上限:10%)

また、一般試験研究費の税額控除制度を適用する事業年度が次の条件に該当する場合には、下記の加算または減算が行われます。

<増減試験研究費割合が4%を超える事業年度>

(増減試験研究費割合 - 4%)× 0.625=加算率(上限5%)
調整前法人税額 × 加算率 = 加算額

※試験研究費割合が10%を超える事業年度の場合は、上記②と比較し、税額控除上限額が大きくなる方を適用します。

<増減試験研究費割合がマイナス4%を下回る事業年度(上記②の事業年度を除く)>

(増減試験研究費割合の絶対値-4%)× 0.625 = 減算率(上限5%)
調整前法人税額 × 減算率 = 減算額

制度対象の試験研究費

一般試験研究費の税額控除制度の対象となるのは、次のいずれかに該当する研究活動に要する費用です。

  • 製品の製造または技術の改良、考案、発明に係る試験研究のための原材料費など
    (新たな知見を得るためまたは、利用可能な知見の新たな応用を考案するために行うものに限る)
  • 対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究(新サービス研究)として行われる試験研究のために要する一定の費用

費用に充てるために他者から支払いを受ける金額がある場合には、その金額を控除した額を試験研究費の額とします。

また、法人が内国法人である場合には、その法人の国外事業所等を通じて行う事業に係る費用の額を除きます

一般試験研究費の税額控除制度を適用する際の申告手続き

一般試験研究費の税額控除制度を適用する場合、確定申告書に控除対象の試験研究費の額および税額控除額を記載し、これらの金額の計算に関する明細書を作成・添付する必要があります。

控除率は試験研究費割合などによって変動するため、控除額の計算根拠を明示した書類を準備し、支出内容を証明する帳簿書類や契約書などを保存しておくことが求められます。

一般試験研究費の税額控除制度を適用するにあたっての留意事項

研究開発税制には、一般試験研究費の額に係る税額控除制度」以外に、「「中小企業技術基盤強化税制」、「特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)」があります。

「一般試験研究費の額に係る税額控除制度」と「特別試験研究費の額に係る税額控除制度(オープンイノベーション型)」は、要件を満たせば併用適用が可能です。

一方、「中小企業技術基盤強化税制」との併用は認められていないため、選択適用する必要があります。

まとめ

一般試験研究費の額に係る税額控除制度は、企業が研究開発に取り組む際の税負担を軽減し、技術投資を後押しする有効な仕組みです。

適用にあたっては、対象費用の整理や控除率・限度額の正確な算定に加え、申告書類の整備や税務調査への備えが欠かせません。

また、税制改正によって要件や控除率が変動する可能性があるため、最新情報の確認と社内体制の維持・整備が重要です。

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