ビジネスにおいて「レバレッジ効果」がいわれることがありますが、その効果とはどのようなものでしょうか? また、どのようなリスクがあるのでしょうか? 具体的に教えてください。
【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/
レバレッジとは、梃子(てこ)のことです。
長い棒と支点を持つことで、重いものでも少ない力で動かすことができます。
ビジネスにおいては、しばしば「レバレッジを使おう」、「レバレッジを効かせよう」という言葉が使われます。
これは、ビジネスを伸ばすための借入で資金を調達して成長することを指します。
借入金を「てこ」に見立ててビジネスを持ち上げるイメージです。
レバレッジというと、どこかスマートなイメージがありますが、借入は借入であり、借金であることに変わりはありません。
ちなみに、借入によるレバレッジ効果なので「財務レバレッジ」呼ばれることもあります
今回は、レバレッジの効果とそのリスクについて学んでいきましょう。
レバレッジ効果なら1株当たり資産価値が増える
レバレッジ効果とは、簡単にいうと、「少ない自己資金でも、借入による資金調達でビジネスをまわすことで、大きなリターンを得られること」となります。
このレバレッジ効果、経営者や金融関連の方の間では人気のあるキーワードで、不動産投資やFX取引でも用いられる用語です。
不動産業者の方が私に「不動産投資はレバレッジが効くので美味しいのですよ」と言い寄ってきたこともありました。
では、自己資本だけでビジネスをするのと、借入を実行してビジネスをするのとでは、どれくらい差があるのでしょうか?
そこに、どのようなレバレッジ効果が生まれるのでしょうか?
たとえば、あるビジネスをするのに100円の資本が必要とします。
この100円を投資するのに、自己資金のみで投資をした場合と借入金も用いた場合を比較してみましょう。
まず、自己資本のみで100円を投資します。
この時点では、「投資をした資産=資本=100円」となります。
この100円の資産は、毎年10%の利益=10円を生み出します(簡素化のため税金は省略します)。
そうすると、5年後に自己資本は100円から150円に増えます。
資産100は毎年10%の利益を生むので10が利益剰余分金となる。
5年後は10×5ヶ月=50の利益剰余金が積み上がる。
100の投資をして、5年後に自己資本が150まで増えるので悪くないですね。
では、この投資案件について、借入によるレバレッジを用いた場合はどうなるでしょうか?
資産からのリターンは同じく10%で、「毎年100円×10%=10円」のリターンです。
借入は80円として、2%の利率とすると、「80円×2%=1.6円」の支払利息が生じます(やはり税金は省略します)。
その結果、今回は20円の自己資本が62円に増えるので、3倍以上に自己資本分が増えることになります。
資産100は毎年10%の利益を生むので10が利益剰余金となる。
今回は借入に対して2%の金利を払うので80×2%=1.6が毎年の支払い利息
資産100に対して10%のリターンが「10」あり、そこに1.6の支払い利息が生じるため
毎年8.4の利益剰余金が発生する。
5年後は8.4×5ヶ月=42の利益剰余金が積み上がる。
100円の資産への投資に対して、自己資本で100円を用意すると自己資本は150円まで増えますが、20円を自己資本、80円を借入で投資をすると自己資本は、なんと62円まで増えます。
もし、この会社の株価を「1円」と考えれば、自己資本100円の会社の1株当たり純資産は、5年後には「150円÷100株式=1.5円」です。
一方、借入を用いて自己資本20円で100円のビジネスを始めた場合は、「62円÷20株式(20円の資本金=20株式)=3.1円」です。
このように、自己資本のみで全額投資するよりも借入を用いた方が、資本金に対して自己資本分は増え、結果として1株当たり資産価値も増えることになるのです。
レバレッジ効果のリスクを検証する
では次に、レバレッジを効かせることのリスクについて考えてみます。
1.借入を返済できないリスク
当然、借入をしてのビジネスなので借入の返済義務が生じます。
もしも返済できない場合には、倒産リスクに直面します。
不動産投資においては、レバレッジ(借入)をして大きな不動産を購入し、家賃収入から返済することがありますが、家賃が想定通りに入金されないと返済原資が手当てできず、ローン破産というリスクに直面することになります。
不動産なら家賃収入というわかりやすい目安がありますが、ビジネスで投資をする時も、その投資したビジネスが想定通り儲からなければ、利息を支払うのにも苦労をしてしまいます。
つまり、ビジネスを伸ばすためのレバレッジが倒産へのレバレッジとなってしまう可能性があるということです。
ですから、何でもレバレッジを使えば良いというものではないことに注意が必要です。
2.財務レバレッジが逆ザヤになるリスク
前述の例では借入の利率を2%としています。
こちらの利率と、借入によって投資をした資産からのリターンの利益を比較して、
「資産からのリターン率 < 借入による金利率(投資資産と借入の金額が同等の場合)」
となっていると、やはりいくら借入をしても、その借入は「てこ」としてのレバレッジ効果を生み出しません。
これは、100の資産で10%のリターンにより15の利益を生んでも、100の借入で15%の金利であれば、15の支払利息で赤字になることからもわかります。
借入による金利負担を考慮しても、なおそれ以上にリターンが見込める投資だからこそ借入をすることでレバレッジ効果が生まれるのですから、どのような資産へ投資をするのか、どのような条件で借入をするのか、について慎重に考えて投資と借入を実行することが大切です。
近年、上場企業は好決算が続き、自己資本が積み上がっています。
そこで、