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税制適格・非適格ストックオプションの課税関係と制度上の相違点

ベンチャー企業など会社が大きく成長できる見込みがある場合、業績向上のために役員・従業員へのインセンティブ報酬として、ストックオプションを付与する選択肢があります。

ただストックオプションには種類があり、それぞれで所得税の取り扱いが異なりますので、本記事でストックオプションの概要と、所得税の課税関係をご確認ください。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

ストックオプションの概要

ストックオプションとは、会社が役員や従業員に対して付与する自社株式を、一定の期間内にあらかじめ定められた権利行使価格で購入することができる権利です。

ストックオプションが付与された役員・従業員は、将来株価が上昇した時点で権利行使することにより、実際の株価よりも低い金額で株式を取得することができます。

ストックオプションには、ストックオプション税制の適用を受けて取得する「税制適格ストックオプション」と、ストックオプション税制の適用を受けないで取得する「税制非適格ストックオプション」の2種類存在します。

会社から与えられたストックオプションが、税制適格か税制非適格のどちらに該当するかによって、課税時期や所得区分等が変わるため注意してください。

税制非適格ストックオプションに係る課税関係

税制非適格ストックオプションの場合、ストックオプションの権利を行使した時点と、取得した株式を売却した時点で所得税の課税関係が生じます。

ストックオプションの権利行使した際に課される税金

ストックオプションを権利行使した場合、以下の方法で算出した金額が経済的利益として所得税の課税対象となります。

<権利行使時の所得金額の計算式>
(権利行使時株価−権利行使価格)×株式数=所得金額(給与所得または雑所得)

たとえば権利行使時の株価が130円、権利行使価格が100円の場合、1株当たりの利益は30円となり、1万株の権利を行使した場合、所得金額は30万円です。

経済的利益に係る所得区分については、株式の発行法人とその権利を与えられた人との関係等により異なります。

株式の発行法人で働いている人については給与所得、職務の遂行と関連を有しない利益が供与されていると認められるときなどは、雑所得の課税対象です。

権利行使した株式を売却した際に課される税金

ストックオプションの権利を行使して取得した株式を売却した場合、譲渡所得の課税対象です。

譲渡所得は、売却金額から取得価額を差し引いた利益に対して課税されることになり、税制非適格ストックオプションの場合、権利行使時株価を、取得価額として計算します。

<株式を譲渡した際の計算式>
(売却価格−権利行使時株価)×株式数=所得金額(譲渡所得)

税制適格ストックオプションに係る課税関係

税制適格ストックオプションの場合、権利行使した際に得られる利益への課税は、株式売却時点まで繰延されるのが特徴です。

「税制非適格ストックオプション」であれば、権利行使時にその時点までの経済的利益に対する課税が行われます。

一方「税制適格ストックオプション」では、権利行使時の経済的利益については課税されない代わりに、売却時点で経済的利益と売却利益を合わせて課税されます。

<株式を譲渡した際の計算式>
(売却価格−権利行使価額)×株式数=所得金額(譲渡所得)

所得税におけるストックオプションの税制適格・非適格の違い

税制非適格ストックオプションは、権利行使時および株式売却時の2度課税関係が生じますが、税制適格ストックオプションは株式売却時にまとめて課税を行います。

税制非適格ストックオプションの権利行使時の経済的利益は、給与所得または雑所得の対象となるため、所得金額が多くなるほど課される税率は高くなります。

それに対し、株式を売却した際に課される株式の譲渡所得の税率は、一律20.315%(国税15.315%、地方税5%)です。

税制適格ストックオプションは、権利行使時の経済的利益も譲渡所得の課税対象であり、最高税率は譲渡所得の方が低くなります。

したがってストックオプションによる利益が多い場合、税制適格ストックオプションの方が納める所得税は少なくなります

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