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「通常の地代」と「相当の地代」の違いと借地権評価における注意点

相続税で借地権の評価額を算出する場合、支払われている地代の額によって評価方法が変わることがあります。

本記事では、通常の地代と相当の地代の違いと、地代の額に応じた借地権の評価方法について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

通常の地代とは

通常の地代とは、借地権部分を有している借主が底地部分を借りるために支払う地代をいいます

借地権設定時に権利金を支払っている場合、借地権部分に対する地代を支払う必要はありません。

しかし底地部分の権利は土地所有者が引き続き有していますので、底地を使用する対価として毎月地代(通常の地代)を支払うことになります。

<通常の地代の計算方法>
土地の価額 ×(1-借地権割合)×6%=通常の地代

相当の地代とは

「相当の地代」とは、土地全体に対する地代です

借地権を設定する際、対価として権利金など一時金の授受が行われるのが通例ですが、土地の所有者が同族関係者の場合、権利金のやりとりが行われないこともあります。

法人については、借地権を設定した際に権利金の授受をしていないと、権利金の認定課税(権利金に相当する金額の贈与がされたものと見なされ課税される)が行われる可能性があるので注意が必要です。

一方、権利金の授受が行われていない場合でも、権利金の代わりに相当の地代が支払われていれば、権利金の認定課税は行われません。

相続税では相当の地代が支払われているか否かによって、借地権の評価方法が変わるため、実際に支払われている地代が、次の計算式で算出された額に該当するかを判断しなければなりません。

<相当の地代の計算方法>
土地の価額 ×6%=相当の地代

地代を算出する際の「土地の価額」の求め方

貸借が行われている土地の地代が、相当の地代等に該当するかを判定する際の「土地の価額」は、時価が原則です。
ただし、課税上弊害がない限りは、次の金額を土地の価額とすることも認められています。
・評価対象地の近くにある、類似した土地の公示価格などから合理的に計算した価額
・評価対象地の相続税評価額または、評価額の過去3年間の平均額

「土地の無償返還に関する届出書」の扱い

「土地の無償返還に関する届出書」とは、借地権の設定等に係る契約書において、将来借地人等が土地を無償で返還することを定めているときに提出する届出書です。

権利金を受け取っていない法人は、基本的に権利金の認定課税の対象となりますが、「土地の無償返還に関する届出書」を提出していれば、権利金の認定課税は行われません。

また、土地の無償返還に関する届出書は、土地所有者が個人の場合でも提出することは可能です。

一般的な借地権の相続税評価額の計算方法

一般的な借地権の相続税評価額は、借地権の目的となっている土地の自用地評価額に借地権割合を乗じて算出します。

自用地評価額は路線価方式または倍率方式により算出し、借地権割合は路線価図または評価倍率表に表示されています。

なお相当の地代が支払われているケースなど、土地の貸借関係等によって借地権の評価方法が異なる点には注意してください。

相当の地代を支払っている場合の借地権の評価方法

相当の地代が支払われている土地に借地権が設定されている場合には、次のように評価します。

土地の状況等・・・権利金を支払っていない場合または、特別の経済的利益を供与していない場合
借地権評価額・・・ゼロ

土地の状況等・・・上記以外の場合
借地権評価額・・・※1で算出した額

※1
1-(実際に支払っている地代の年額-通常の地代の年額)÷(相当の地代の年額-通常の地代の年額)=A
自用地評価額×(借地権割合×A)=借地権評価額

被相続人が相当の地代を支払っていれば、借地権評価額は基本的にゼロとなりますが、状況次第で評価額が算出されることもあります。

相当の地代は土地の価額の6%が基準となりますので、実際に支払っている地代の額だけでなく、土地の価額の算定も重要です。

相当の地代に満たない地代を支払っている場合の借地権の評価方法

通常権利金を支払う取引上の慣行のある地域において、借地権が設定されている土地に対して支払われている地代の額が相当の地代の額に満たない場合、借地権は次のように評価します。

<相当の地代に満たない地代を支払っている場合の借地権評価額の計算式>
1-(実際に支払っている地代の年額-通常の地代の年額)÷(相当の地代の年額-通常の地代の年額)=A
自用地評価額×(借地権割合×A)=借地権評価額
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