当社では、各社員の給与を把握しているのは役員のみです。しかし、社員同士が自分の給与がいくらなのか話してしまうことで、企業経営の円滑な運営を妨げる事態が生じるおそれがあります。そのため、このような場合は懲戒処分としたいと思いますが問題ないでしょうか。
【この記事の著者】 定政社会保険労務士事務所 特定社会保険労務士 定政 晃弘
多くの企業の場合、社員の給与データについて把握しているのは役員や給与計算担当社員等、ごく限られた方だけです。他人の給与がいくらなのか、どのくらい昇給したのか、賞与はいくらもらったのか知りたいという気持ちは分からないでもありません。
しかし、お互いに給与の話をした結果、同じような働き方をし、同じような評価をされていると思っていたのに相手より評価・給与が低いことを知ったらどういうことが起きるでしょうか。
上司に「何故なのか?」と説明を求めて詰め寄る社員はいるでしょう。あるいは何も言わないもののモチベーションがダウンする社員がいるかもしれません。もしかしたら直ちに転職活動する社員が出てくることも考えられます。
このように社員がお互いの給与について話をすることは、企業にとっては望ましいものではありません。
そこで話をした場合に、懲戒処分とすることができるかどうかについて検討したいと思います。
就業規則の懲戒の規定に「社員が、お互いの給与について話をしたら○○に処する」
(「○○」は訓告や減給等が考えられます)というものがあり、その規定に沿って処分した場合であってもその処分は無効となる可能性が高いでしょう。処分だけでなく、規定も適切なものではないため、削除すべきです。