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経営分析に使える財務指標。5分類の見方と使い方を解説

経営分析において、財務指標は企業の収益性や安全性などを定量的に把握するための基本ツールです。

分析によって課題が明らかになれば、経営方針の見直しなどの対策が講じられるため、情報として管理しておくことが望ましいです。

本記事では、実務で活用される主要指標を体系的に整理し、それぞれの見方と活かし方を解説します。

財務指標の基本と経営分析への活用意義

財務指標は、企業の経営状態を客観的に評価するための分析ツールです。

複数の視点から財務データを数値化することにより、課題の発見や改善策の立案が可能になります。

分類は「収益性」「安全性」「効率性(活動性)」「生産性」「成長性」の5つであり、それぞれの目的を正しく理解することで、意思決定の精度が高まり、説明責任の達成にもつながります。

収益性の指標とその読み解き方

企業の収益力は、事業の持続性や投資判断に直結する、重要な評価項目です。

総資本経常利益率(ROA)

総資本経常利益率は、資本効率や収益性の全体的な高さを測る基本指標です。

企業全体の資本に対して、経常的な利益がどれだけ得られているかを示します。

【算出式】
経常利益 ÷ 総資本 × 100=総資本経常利益率

売上高総利益率(粗利率)

売上高総利益率は、売上に対する粗利益の割合を示す指標です。

商品やサービスの根本的な収益力を把握できる指標で、利益率が高いほど、価格戦略や原価管理の成果が現れているといえます。

【算出式】
売上総利益 ÷ 売上高 × 100=売上高総利益率

自己資本当期利益率(ROE)

自己資本当期利益率は、自己資本に対して、当期純利益がどれだけ得られたかを示す指標です。

企業の収益力と資本活用の効率性を総合的に判断する材料になります。

【算出式】
当期純利益 ÷ 自己資本 × 100=自己資本当期利益率

売上原価率

売上原価率は、売上高に対して、原価が占める割合を示す指標です。

原価の抑制状況や利益確保に向けた課題を把握するのに役立ちます。

【算出式】
売上原価 ÷ 売上高 × 100=売上原価率

売上高販管費率

売上高販管費率は、売上高に対して、販売費および一般管理費がどれだけかかっているかを示す指標です。

費用構造の効率性や、収益への圧迫度を分析する視点として活用できます。

【算出式】
販売費および一般管理費 ÷ 売上高 × 100=売上高販管費率

安全性の指標と企業体質の評価法

安全性の指標は、企業の財務安定性を測るうえで、資金調達や支払能力を確認するための重要な視点です。

流動比率

流動比率は、流動資産(1年以内に現金化が予定される資産)が、流動負債(1年以内に支払いを要する負債)に対してどの程度あるかを示す指標です。

短期的な支払能力を評価する際に用いられ、一般的に120%以上であれば、安全性の面で一定の安心材料といえます。

【算出式】
流動資産 ÷ 流動負債 × 100=流動比率

当座比率

当座比率は、現金や預金、売掛金など、即時資金化可能な当座資産の流動負債に対する割合を示す指標です。

より厳格な支払能力を評価する際に用いられ、当座比率が高い場合は短期的な債務の返済能力があるとされます。

【算出式】
当座資産 ÷ 流動負債 × 100=当座比率

固定比率

固定比率は、自己資本に対する固定資産の割合を示し、設備投資が自己資本でまかなわれているかを把握するための指標です。

比率が高すぎる場合、自己資本の柔軟性が乏しくなる可能性があります。

【算出式】

固定資産 ÷ 自己資本 × 100=固定比率

負債比率

負債比率は、企業の自己資本に対して、負債がどれだけの割合を占めているかを示す指標です。

財務構造の健全性や資本調達の状況を把握するために用いられ、他人資本への依存度が高いと、返済負担や利息の影響を受けやすくなります

【算出式】

負債 ÷ 自己資本 × 100=負債比率

自己資本比率

自己資本比率は、総資本のうち自己資本が占める割合を示す指標です。

企業の財務的な安定度を判断する材料で、高い比率は他人資本への依存が低く、信用力の高さを示す傾向があります。

【算出式】
自己資本 ÷ 総資本 × 100=自己資本比率

効率性(活動性)の指標と資産活用の見極め方

効率性(活動性)指標は、企業が保有する資源を、どれだけ有効活用して売上を生み出しているかを示します。

業務の流れや資産の回転状況を把握することで、運営体制の改善に役立ちます。

総資本回転率

総資本回転率は、総資本が年間の売上高に対して、どれだけ効率的に活用されているかを示す指標です。

数値が高いほど、効率的に売上を上げていることを意味します。

【算出式】

売上高 ÷ 総資本=総資本回転率

流動資産回転率

流動資産回転率は、流動資産がどれくらいの頻度で売上につながっているかを測定する指標です。

資金の流動性や短期資産の効率性を確認する材料として活用されます。

【算出式】

売上高 ÷ 流動資産=流動資産回転率

固定資産回転率

固定資産回転率は、設備などの固定資産がどれだけ売上創出に貢献しているかを示す指標です。

投資対効果や設備投資の妥当性を評価する際に活用されます。

【算出式】

売上高 ÷ 固定資産=固定資産回転率

棚卸資産回転率

棚卸資産回転率は、在庫がどの程度迅速に売上に変わっているかを測定する指標です。

在庫管理の適正性や滞留リスクの評価に役立ちます。

【算出式】
売上原価 ÷ 棚卸資産=棚卸資産回転率

売上債権回転率

売上債権回転率は、売上に基づく債権(売掛金など)の回収がどれくらい効率的かを表す指標です。

資金回収のスピードや信用管理の状況を把握できます。

【算出式】
売上高 ÷ 売上債権=売上債権回転率

買入債務回転率

買入債務回転率は、仕入れに伴う債務(買掛金など)の支払いがどの程度の頻度で行われているかを示す指標です。

仕入先との資金管理のバランスや運転資本の活用状況を検討する際に用いられます。

【算出式】

売上原価 ÷ 買入債務=買入債務回転率

生産性指標と企業運営への反映

生産性指標は、企業の資源や人材がどれだけ成果(付加価値)につながっているか
を把握するために活用されます。

売上高付加価値率

売上高付加価値率は、売上高に対して、どれだけの付加価値が生み出されているかを示す指標です。

企業の価値創出力や事業構造の強さを測る参考になります。

【算出式】

付加価値額 ÷ 売上高 × 100=売上高付加価値率

労働分配率

労働分配率は、付加価値のうち、従業員に還元された人件費の割合を示す指標です。

人件費の妥当性や利益配分のバランスを判断する材料になります。

【算出式】

人件費 ÷ 付加価値額 × 100=労働分配率

労働生産性

労働生産性は、従業員一人当たりが生み出す付加価値を示す指標です。

組織全体の人材活用効率や、生産体制の改善余地を把握する材料として活用できます。

【算出式】

付加価値額 ÷ 従業員数=労働生産性

資本生産性

資本生産性は、投下した資本がどれだけの付加価値を生み出したかを示す指標です。

資本の活用効率を測るために用いられ、企業が所有する設備や資金といった資本をいかに効率的に利用し、利益に結びつけているかを評価することができます。

【算出式】

付加価値額 ÷ 投下資本(または総資本)=資本生産性

成長性指標による企業の将来性分析

成長性指標は、企業の事業規模や収益力がどのように拡大しているかを測定するために用いられます。

売上高増加率

売上高増加率は、前年からの売上高の増加割合を示す指標です。

事業の市場拡大や、需要拡大の状況を判断する根拠として使われます。

【算出式】

(当期売上高 - 前期売上高)÷ 前期売上高 × 100=売上高増加率

経常利益増加率

経常利益増加率は、経常的な利益が前年比でどれだけ増減したかを示す指標です。

企業の本業による収益力向上の度合いを評価する視点として活用されます。

【算出式】

(当期経常利益 - 前期経常利益)÷ 前期経常利益 × 100=経常利益増加率

総資本増加率

総資本増加率は、総資本の増減を示す指標です。

企業の資本力や外部資金の導入状況を把握でき、成長過程での財務戦略の変化を読み取ることが可能になります。

【算出式】

(当期末総資本 - 前期末総資本)÷ 前期末総資本 × 100=総資本増加率

純資産増加率

純資産増加率は、自己資本(純資産)の増減率を示す指標です。

企業の蓄積された価値や健全性の向上を表し、安定的な資本形成が継続しているかを確認するうえで重要です。

【算出式】

(当期末純資産 - 前期末純資産)÷ 前期末純資産 × 100=純資産増加率

まとめ

財務指標は、経営分析を体系的かつ迅速に進めるための有効なツールです。

作成と更新を継続することで、精度の高い課題の発見と対策の立案が可能になります。

ただし、数値のみに依存するのではなく、背景や関連性を踏まえながら冷静に読み解く姿勢が、戦略的な経営判断を支える重要な要素となります。

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