上場直後の会社で不正出金があった事例を報道で知りました。具体的には、どのような仕組みで不正が行われたのでしょうか?
【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/
これまで見てきた不正会計事例は比較的、会社の売上や利益を偽装するための不正が多かったと思います。
しかし、残念ながら私腹を肥やすための不正も生じることがあります。
今回は支払業務を担当していた経理の責任者が、自分の管理会社や協力者を利用して、不正送金を実施した事例 を紹介します。
本件の当該会社には人気のある動画サービスのネットワークがあり、動画に表示される広告収入をひとつのビジネスモデルとしていました。
この動画ネットワークにアプリ開発者が開発アプリを登録し、当該アプリを組み込ませることで動画に広告を表示させることができるようになります。
人気動画であれば、動画視聴ユーザーがたくさんいます。
そして、ユーザーが広告をクリックするたびにアプリ開発者に当該会社から一定のマージンを差し引いた報酬が支払われます。
このようなビジネスモデルでは、アプリ開発者への報酬は広告のクリック数の発生データに基づきます。
広告のクリック数の発生データに基づき、アプリ開発者への支払報酬が決まり、会計システムへの計上や振込データが作成される流れです。
この流れを確認すると次のようになります。
①広告クリック発生データの取得
②アプリ開発者への支払データの作成
③会計システムへの計上
④支払データから振込データの作成
本件では、管理部の管轄が③と④でした。
この2つの業務について経理責任者がデータ改ざんをしたのです。
本件では、④の振込データを改ざん後、実在するアプリ開発者への支払と不正協力者の口座への入金をしていました。
振込の際は、不正協力者の口座が目立たないように、ひとつの不正協力者振込先に対して送金を3回に分けて1回の送金額を少額にする、インターネットバンキングの振込先頁に同一の送金先が入らないように3回に分けた振込を別々の振込ページに表示されるようにする、などの注意をしていました。
そして