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従業員個人が行なった不正事例と会社が注意すべきポイントとは?




従業員個人が行なった不正事例と、その際に会社が注意すべきポイントについて教えてください。


【この記事の著者】 江黒公認会計士事務所 公認会計士 江黒 崇史
http://www.eguro-cpa.com/

不正は、なぜ起こるのでしょうか?

経営者の立場からすれば、業績を良く見せたい、外部・内部の利害関係者のためにも好業績を誇示したいなど、さまざまな要因があるでしょう。
一方、従業員の立場からすると、個人として儲けたいという欲求が要因となって不正を働くことがあります。

今回ご紹介する不正事例は、従業員自身が利益を得るべく不正を働いた事例です。

不正取引の内容

本件では、不正行為者たる従業員が特定の外注先に対してキックバックを要求していました。

その手口は、不正行為者が外注先に対して実際の稼働よりも多い金額の請求書を会社宛に作成・発送させるというものでした。
そして、会社には届いた請求書通りの金額(水増しされた金額)を外注先2社に支払わせた後、外注先2社から水増しした一部の金額をキックバックとして受領していたのです。

非常にシンプルな手口ですが、この不正は3年間にわたり行なわれていたということです。
不正実行者の供述では不正金額は786万円で、会社経営の視点から見れば大きい金額ではないかもしれませんが、一従業員個人が得るキックバックとしては十分大きな金額でした。

不正の発生原因

不正が起こった直接的な原因としては、不正実行社員の倫理観の欠如ですが、会社の管理体制としては以下の点で間接的に不正ができる原因があったと調査報告書で述べられています。

①水増しされた請求書に基づき支払が実行されたこと

ⅰ.工事日報と請求書の内容に差異があるにも関わらず、そのまま支払がなされたこと
ⅱ.工事日報の改ざんがなされたこと

②モニタリングが不十分であったこと
ⅰ.上長のモニタリングが不十分であった。
例えば、納品伝票類の不存在等を看過し、噂段階の疑義について曖昧な監視指示に留まっていた
ⅱ.内部監査によるモニタリングの認知度が不十分であった
ⅲ.職場内モニタリングが不十分であった

③外部との共謀防止体制の不備
ⅰ.外注先への発注権を有している者が、現場管理も行なっているため、キックバックを得やすい環境にあった
ⅱ.従業員が長期固定化しており、固定化した従業員の権限分配が不十分であった

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