不動産売買等で大損をしない公正価値の概算方法を教えてください。
また、そもそも公正価値とは何なのでしょうか?
【この記事の著者】 冨田会計・不動産鑑定株式会社 冨田建公認会計士・不動産鑑定士事務所
不動産鑑定士・公認会計士・税理士 冨田 建
不動産の売買価格は、売主と買主が合意すればその価格で決定され、原則として価格の法的な制限はありません。
仮に、銀座の100㎡の土地を10万円で売買しても当事者の自由です。
ただ、多くの人はその金額では「安すぎる」と感じるでしょう。
それは、銀座の「世間一般から見て妥当と判断される価格」と比較して極端に安いと判断しているからです。
じつは、この「世間一般から見て妥当と判断される価格」こそが公正価値なのです。
公正価値と実際の売買予定額とを比較し、売主の場合は「極端に低くないか」、買主の場合は「極端に高くないか」を検討することで不動産売買時等での大損を回避できるのです。
公正価値の概算方法
ここでは特殊性が低く、建物がある場合は継続利用が合理的な不動産について、
執筆者個人の意見としての公正価値の概算方法を提案します。
なお、以下は執筆者個人の見解としての簡便法としての概算方法の提案に過ぎないため、
活用はご自身の責任においてお願いします。
また、実際の不動産鑑定では土地価格は現実の取引事例に基づき求めること、
建物部分を詳細に分析・検討する等の相違がある点を、あらかじめ了承ください。
戸建住宅や工場等の「自分で使う用の不動産」の場合
土地価格と建物価格を合計して求めます。
土地価格=前面道路相続税路線価×係数①×土地面積②×個別補正③
建物価格=再調達原価④×(耐用年数⑤-新築後の経過年数)÷耐用年数×延床面積
※更地の場合や新築後の経過年数が耐用年数を上回る場合は「建物価格」を0円として下さい。
※「相続税路線価」は国税庁のHPにて無料で確認できますが、相続税算定のために便宜的に
設定された数値ですので、公正価値とは直接は一致しません。
※また、土地や建物の面積、建物の新築時点は登記簿謄本等を参考に判断してください。
※なお、式にある①~⑤については下記に留意して下さい。
①都市部ほど高い傾向にあります。目安は東京都心部で1.5~2.0前後、東京23区郊外の住宅地で1.3~1.5前後、地方都市の中心部で1.25前後、過疎地で1.0前後。
②前面道路が狭い場合の要・道路提供部分や転用困難な農地・林地部分がある場合等の当該部分は除きます。
③例えば、大きな土地であれば規模により70~95%前後、不整形であれば程度により70~99%前後、二方路や角地等なら101~103%前後といった数値が考えられます。
④標準的なグレードで、木造建物は130~150千円/㎡前後、鉄骨造は150~200千円/㎡前後、鉄筋コンクリート造は200~300千円/㎡前後。
なお、この概算に際しては保守的観点から上記の幅の中でも比較的低目の水準で考えた方が無難と思われます。
⑤木造で30年前後、鉄骨造で35~40年前後、鉄筋コンクリート造で40~50年前後。
共同住宅や貸ビル等の「貸して稼ぐ系の不動産」の場合
下記の算定結果を標準に、上述の「自分で使う用の不動産」と同様の手法の結果との均衡も考慮して求めます。
満室時の賃料総額×約70%÷還元利回り
※「還元利回り」は、一般的に地価の高い場所や建物が新しいほど低い数値となります。
例えば東京都心の新築オフィスビルで4%台前半、東京23区郊外の新築共同住宅で5.5%前後、地方の政令指定都市の新築オフィスビルは6~7%弱前後。
建物が古い場合は、状況にもより更に+1~3%前後が目安となるでしょう。
不動産鑑定士の使命は、専門的な分析による公正価値の把握を通じ、その不動産に関し経済行為を欲する利害関係者の後押しをし、若しくは前述の銀座の例のように不合理な場合は、その行為を回避させる点にあります。
もし、具体的に売買等の経済行為を検討される場合は