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どこまでやるとセクハラ…最高裁が下した判決とは?


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近年、社会的な問題としても話題に上がる労働問題にセクハラがあります。

セクハラについては、厚生労働省が公表している指針や「男女雇用機会均等法」などの法律に規定されていますが、「認識の相違」や「個人の主観」も関わるため、その性格上、明確な判断基準が難しい部分もありました。

しかし、2015年2月のある裁判の判決によって、今後、セクハラに対する企業側の対応に「厳格化」が求められていくことになりそうです。

事件はこうして起きた

「“セクハラ処分は有効”=無効判断の二審破棄―水族館職員の上告審・最高裁」(2015年2月26日 時事通信)

大阪市にある水族館の運営会社で行われたセクハラ行為に対して、管理職の男性2人が会社の下した懲戒処分は不当だとして訴えた裁判について、最高裁は「処分は無効」とした2審の判決を破棄しました。

このセクハラ裁判の経緯は以下の通りです。
・2010年11月~2011年12月にかけて、水族館の運営会社の管理職だった男性2人が、20~30代の派遣社員の女性2人に対してセクハラ発言を繰り返す。

・訴訟でセクハラと認定された発言の一部
「俺の性欲は年々増すねん」
「夫婦間は、もう何年もセックスレスやねん」
「結婚もせんでこんな所で何してんの。親泣くで」
「もう、お局さんやで。怖がられてるんちゃうん」
「男に甘えたりする?」
「地球に2人しかいなかったらどうする?」

・セクハラ被害にあった派遣社員の女性2人が会社に被害を申告。その後、1人が派遣会社を辞め職場から去る。
会社側は、管理職の男性2人から事情を聴取し、弁解を聞いたたうえで2012年2月、それぞれ30日間と10日間の出勤停止を命令し、課長代理から係長に降格処分を下した。
すると男性2人は、「セクハラ発言には当たらない」、「事前に注意や警告もなく処分したのは不当」だとして提訴。

・1審の大阪地裁では、「上司という立場でありながら、繰り返しセクハラ行為をしており悪質」、「処分は社会通念上、妥当」だとして請求を棄却。

・ところが、2審の大阪高裁では、「女性が男性らに明確に抗議しておらず、会社側が男性らに適切な指導をしたかも疑問だ」と指摘。
「処分は重すぎて無効」と判断。

・これを受けて会社側は、「抵抗や抗議が困難な上下関係の中で非公然と行われたセクハラ行為。事前に注意や警告をすることが難しいセクハラ行為の特殊性を考慮していない」として上告。

・今回の最高裁判決では、
「職場内で女性に強い不快感や嫌悪感を与える発言を1年余りにわたって繰り返しており、不適切だ」
「今回のセクハラ行為の多くは第三者のいない状況で行われており、会社側が事前に警告や注意ができたとは言えない」
として、会社が下した出勤停止と降格の懲戒処分は重過ぎるものではないと結論づけました。

リーガルアイ

「セクシャルハラスメント」という言葉や概念は、1970年代初めにアメリカで生まれたとされます。
日本でセクハラという言葉が使われるようになったきっかけは、1986年に起きた「西船橋駅ホーム転落死事件」で、加害者となった女性を支援する団体が使い始めたようです。

法律では、1997年の「男女雇用機会均等法」の改正で性的嫌がらせへの配慮が盛り込まれ、さらに2007年の改正で範囲を拡大し、男性への性的嫌がらせも配慮の対象となっています。

【セクハラの定義とは?】
セクハラとは、「職場において行われる」、「労働者の意に反する」、「性的な言動」のことです。

男女雇用機会均等法では、以下のように規定しています。

「事業主は、職場において行われる性的な言動に対するその雇用する労働者の対応により当該労働者がその労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない」(11条1項)

【セクハラの判断基準とは?】
職場での行為がセクハラにあたるかどうかについて判断するには、次の3点を検討します。

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