ビジネスをしていると、取引しているお客様から、こちら側がモノやサービスを購入することもあります。
そんな時、「相殺取引は可能か」といった相談がくることもありますが、仕組みを理解して行わないと「不透明な処理」になってしまいます。
今回は、経営者なら絶対知っておきたい相殺請求についてお話しします。
相殺取引を採用すると「キャッシュフローが簡素化」できる
はじめに、相殺取引そのものについて解説したいと思います。
取引をしている2つの会社があって、どちらの会社も受注・発注をしている時に相殺取引ができます。
分かりやすいよう具体例を挙げてみます。
たとえば、デザイン会社がWEB会社にホームページ作成を発注した。
逆に、WEB会社からデザイン会社に別案件のデザインを依頼した。
このような時に相殺取引が可能です。
別の例も挙げてみましょう。
建設関連の親会社が下請け企業に工事をお願いした。
一方で、親会社が下請け企業に重機をレンタルしているといったケースでも相殺取引ができます。
相殺取引のメリットは、入金処理(又は支払処理)を簡素化できるということです。
相殺関係にある2つの会社があったとして、A社がB社より100万円を入金、B社がA社より80万円の入金をする場合は、計2回の振込が必要です。
もし、相殺取引をすればB社がA社に20万円払う1回の振込だけで済みます。
それにより、手数料、作業の人件費、領収書に貼る印紙代などがカットできます。
相殺取引は第三者から見て分かりにくくなりやすい
このようなメリットのある相殺取引ですが、慎重に採用すべきです。
なぜなら、相殺取引は不透明になりやすいからです。
一歩間違えると、当事者同士しか中身が分からなくなり、第三者が中身を確認しようとしても、帳簿だけでは把握しづらい状況になりやすいのです。
とくに複数回の取引をまとめて相殺処理する場合は、流れが複雑になります。
そのため、相殺取引は税務調査があった時、税務署から目をつけられやすくなります。
着目されても、不正がなければ良いではないかという考え方もできますが、しつこくヒアリングされたり、取引先に確認されたりといった手間が発生する恐れがあります。
こういったことが起きないよう、相殺取引を行う場合は「誰の目から見ても明らかな形」での請求処理が必須になります。
相殺取引は「領収書と請求書」で証拠を残すことが大事
相殺取引の処理をする時の厳密なルールはありませんが、 1回ごとの取引で領収書を残す方法が安全です。
実際の入出金がなくても、領収書によって1回ごとの取引の履歴を残しておけば、後から確認しやすくなります。
さらに領収書の備考や内容などの欄に、具体的な取引内容と相殺取引であることを記しておくのが理想です。
請求書も同様です。相殺金額だけを記載するのではなく、途中経過(元の請求金額があって、そこからいくら相殺して、最終的にその金額になったかなど)を明確にすべきです。