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会社に社員がいなくなった場合、社会保険から脱退することはできるか?

最後の社員が退職したことで、会社の社員がいなくなりました。社長である私一人になったので社会保険から脱退したいのですが、可能でしょうか?

解説

【この記事の著者】 社会保険労務士

すべての法人事業所(事業主のみの場合を含む)と農林水産業やサービス業の一部を除く5人以上の事業所は、健康保険と厚生年金保険に加入しなければなりません。

かつては、「健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届」を提出すれば、社会保険をやめることができた時代がありました。
しかしながら、虚偽の申請による違法な脱退も多かったことから、現在は解散登記の記入がある登記簿謄本のコピー等、適用事業所ではなくなったことが明らかとなる書類の添付が必要とされるようになりました。
(旧社会保険庁時代の2006年11月からですが、日本年金機構のHPには「全喪事業所一覧表」が公開されています)

現実問題として、強制適用のはずながら、社会保険未加入の会社が存在します。それにも関わらず、いったん加入してしまうと脱退できない点は矛盾ですが、それが今の現状です。

社会保険に未加入の会社が加入する場合は、原則として「健康保険・厚生年金保険新規適用届」が受け付けられた日からの適用となります。
ただし、悪質なケースや、立入検査による加入などの場合は、2年遡及して適用されることがあります。
その場合、過去2年分の保険料を支払うことになり、分割は可能ですが、延滞金が課せられます。なお、今後、未加入事業所への加入指導が強化される見通しです。

社会保険料の支出を抑えたいのなら、報酬を低くし、年金事務所に「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」を提出します。

都道府県別に最低ラインの賃金が決められていますが、対象となるのは労働者であり、役員の賃金は、最低賃金法に抵触しません。
健康保険の報酬は5万8千円から121万円までの47等級、厚生年金保険の報酬は9万8千円から62万円までの30等級に区分されており、その等級に応じて保険料が算出されます。

等級が低いほど、保険料は安くなります。
なお、手続きが遅れ、保険料に過払いが生じた場合は、今後の保険料に充当されます。

法人を廃止して、個人事業主になれば、国民健康保険と国民年金に加入することになります。
国民健康保険には、社会保険と違って「扶養」という制度がありません。ですから、国民健康保険の保険料は、同じ世帯で国保に加入する人全員の保険料が必要です。
赤ちゃんがいれば、赤ちゃんの分も含めた保険料になります。

社会保検の健康保険では、扶養数によって保険料が変わることはありません。被扶養者の保険料は、加入している保険者が負担しているからです。
これは年金についても、同様です。
したがって、見込み年収130万円未満の配偶者がいる場合、国民年金保険料を支払わなければ未納になりますが、厚生年金で扶養の手続きをとれば、保険料0円で納入扱いです。

年金制度は、よく家に例えられます。
国民年金は、1階建。これを2階建にして、年金額を増やそうと思ったら、自分で新たに付加年金や国民年金基金、確定拠出年金などに加入し、さらに保険料を納めなければなりません。
その点、厚生年金は、何もしなくても最初から上乗せ分がある2階建になっています。

また、年金というと自分が年をとってから貰うイメージですが、障害年金や遺族年金もあります。
その支給対象や範囲は、国民年金より厚生年金の方が手厚くなっています。

その他にも、社保の健康保険には、国保にはない保険給付があります。
一つは傷病手当金といって、病気やケガで仕事を休んだ場合、4日目から最長1年半の間、報酬日額の3分の2が支給されるものです。
もう一つは出産手当金で、出産のために仕事を休んだ場合、産前42日から産後56日まで、報酬日額の3分の2が支給されるものです。

以上のことを踏まえ、社会保険を脱退できないかという消極的な姿勢ではなく、社会保険のメリットを享受すべく引き続き加入しておくほうがよろしいかと思われます。


労働保険(労災保険、雇用保険)は経営者には適用されませんが、社会保険(健康保険、厚生年金保険)は、社長一人であっても法律によって加入が義務づけられている強制適用です。
つまり、社員がいなくなったからといって、

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