うつ病で休職している社員から復職の申し出がありました。どのような対応をしたらいいでしょうか?
【この記事の著者】 社会保険労務士福島里加事務所 社会保険労務士 福島 里加
休職を繰り返すことなく職場復帰できるように、復職は慎重に判断しましょう。
職場復帰させる時は、段階的にリハビリ期間を設けていきます。
労働生産性やコンプライアンス、リスクマネジメントの点から、社員のメンタルへスル対策は大切にしていきましょう。
解説
早期職場復帰には注意と配慮が必要
うつ病は、精神的・肉体的疲労が続くことによって、心のバランスを整えるセロトニンなどの神経伝達物質が十分に機能しなくなってしまう脳の病気です。
適切な治療をすれば治りますが、一直線に回復するというより、一進一退を繰り返しながら徐々に良くなっていくものです。
お薬が効いて病状が良くなると、本人は働けると思いがちですが、それは一時的なもので、また調子が悪くなることがあります。
まずは充分に休むことこそ“仕事”とし、職場復帰を焦らせないように配慮してください。
再発率が高いうつ病は、無理して早期職場復帰するより、1回目の休職でしっかりと心身共にメンテナンスした方が再発を防げます。
本人も会社も、目先の利益より長期的スパンで考えるようにしましょう。
ですから、復職を希望する社員から、主治医による職場復帰可能の診断書が提出されても、それだけで復職にゴーサインを出してはいけません。
主治医は、基本的に社員とその家族の希望に沿った判断をするからです。
産業医や会社指定の医師の診断を受けさせる場合、会社で面談をする際は、主治医にはない観点も併せ持ちます。
全社員の健康への配慮や、社員の業務遂行能力に応じた職場の受け入れ態勢など、種々勘案した上での判断となるので、そのことをあらかじめ伝えておきましょう。
最終的に職場復帰の可否を決めるのは、会社です。
ただし、関係者とよく話し合ってから、結論を出してください。
組織的なメンタルヘルスケアを目指す
会社が職場復帰は時期尚早と判断した場合、復職を期待していた社員は、「主治医はいいと言ったのに…」と不満を持つかもしれません。
具体的に、どのような状況になったら職場復帰が可能とみなされるのか、社員に示しておくといいでしょう。
厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
(http://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/anzen/dl/101004-1_0001.pdf)には職場復帰判定基準の例として、以下のことが挙げられています。
①労働者が職場復帰に対して十分な意欲を示している
②通勤時間帯に1人で安全に通勤ができる
③会社が設定している勤務時間の就労が可能である
④業務に必要な作業をこなすことができる
⑤作業等による疲労が翌日までに十分回復可能である
⑥適切な睡眠覚醒リズムが整っている
⑦昼間の眠気がない
⑧業務遂行に必要な注意力・集中力が回復している
職場復帰可能と判断した場合は、できるだけスムーズに復職できるように支援する必要があります。
スポーツと同じように、まずはウォーミングアップから始めることをお勧めします。
社員がいきなり元の仕事に戻ると、心身ともに負荷がかかるので、