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不動産を公益法人等に寄附した場合の譲渡所得の非課税特例を解説

個人が法人へ土地・建物などを寄附した場合、みなし譲渡所得の対象となりますが、寄附した相手が公益法人等に該当する時は、『公益法人等に財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税の特例』(租税特別措置法第40条)を適用することで非課税になります。

本記事では、租税特別措置法第40条(以下、「措置法40条」とする)の要件と、特例を適用する際に必要な手続きを解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

措置法40条の対象となる公益法人等とは

措置法40条の対象となる「公益法人等」は、公益を目的とする事業を行う法人をいい、一定の要件を満たした特別一般法人や学校法人も対象です。

<特例対象となる主な法人の種類>
● 公益社団法人
● 公益財団法人
● 特定一般法人
(一般社団法人および一般財団法人のうち一定の要件を満たすもの)
● 社会福祉法人
● 学校法人
● 宗教法人
● 特定非営利活動法人

措置法40条を適用するための3つの要件

措置法40条の特例を適用するためには、対象法人へ寄附をするだけでなく、次の3要件をすべて満たさなければなりません。

ただ寄付先が法人税法別表第一に掲げる独立行政法人、国立大学法人に該当する場合は、「要件2」を満たせば特例を受けられます。

適用要件1:寄附が公益の増進へ寄与すること

最初の要件は、寄附が公益の増進に著しく寄与することです。
公益の増進とは、教育や科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献などが挙げられ、次の4項目を満たす場合、公益の増進に寄与するものとして取り扱われます。

<公益の増進に寄与するものの判断基準>
● 寄附を受けた公益法人等行う公益目的事業が、地域やその分野において社会的存在として認識されている規模を有していること
● 公益目的事業により与えられる公益が、特定の人に限らず、公益を必要としているすべての人に与えられること
● 公益法人等の公益目的事業が営利目的でないこと
● 公益法人等の事業運営が法律や公益に反していないこと

適用要件2:寄附財産の用途・使用開始日

寄附を受けた公益法人は、寄附財産を寄附日から2年を経過する日までの期間内に、公益目的事業の用に直接使用しなくてはなりません。

たとえば幼稚園に土地を寄附した場合、2年以内の間に寄附した土地を園地や庭園などとして利用する必要があり、公益目的事業以外(有料駐車場など)に利用した場合は特例の対象外となります。

ただし寄附を受けた土地の上に公益事業目的の建物を建設する場合で建物の建築に要する期間が2年を超えるときなど一定のやむを得ない事情があると認められるときは国税庁長官が認める日までの期間となります。

適用要件3:過度な節税目的による寄附の禁止

措置法40条は所得税や、親族などの相続税・贈与税の税負担を、不当に軽減する目的で利用することを禁止しています。

そのため次に掲げる判断基準をすべて満たさなければ、不当に税負担を軽減するものと判断され、特例は適用できません。

<不当な税負担の軽減とならないための判断基準>
① 役員等の割合
● 理事、監事および評議員(以下「役員等」とする)のいずれにおいても、親族関係のある人および特殊関係人の合計数の割合が3分の1以下であること
● 寄附行為、定款または規則において、上記についての定めがあること
● 寄附を受けた公益法人等の運営組織が適正であること

② 役員等への特別の利益供与
● 寄附した人、寄附を受けた公益法人等の役員等、社員または、これらの人の親族関係や特殊関係人に対し、下記に掲げる事項に関して特別の利益を与えないこと
● 施設の利用、金銭の貸付け、資産の譲渡、給与の支給、役員等の選任、その他財産の運用および事業の運営

③ 解散した際の財産の帰属
● 定款において公益法人等が解散した場合、残余財産が国、地方公共団体または他の公益法人等に帰属する旨の定めがあること

④ 公益に反する事実の有無
● 寄附を受けた公益法人等に対して、公益に反する事実がないこと

⑤ 保有株式数
● 寄附により公益法人等が株式の取得をした場合、取得によりその公益法人等の保有することとなる株式(寄附前から保有する株式を含む)が、発行済株式の総数の2分の1以下に収まること

措置法40条を申請する際に必要となる手続き

措置法40条の特例を適用するためには、定められた期限までに「租税特別措置法第40条の規定による承認申請書」を提出しなければなりません。

承認申請をする人は寄附者

「租税特別措置法第40条の規定による承認申請書」を申請する人は、寄附をした本人です。

遺贈により寄附や、申請書を提出する前に寄附者が死亡している場合は、相続人が申請書を提出することになります。

提出期間は寄附日から4か月以内

承認申請書の提出期限は、寄附の日から4か月以内です。

ただし寄附した年分の所得税の確定申告書の提出期限が、先に到来する場合は、確定申告書の提出期限までに申請書を提出しなければなりません。

承認申請書の提出先

措置法40条の特例は国税庁長官の承認が必要な申請ですが、承認申請書の提出先は、寄附した人の所得税の納税地を管轄する税務署です。

承認申請書の提出先

措置法40条の特例は承認されたとしても、その後要件に該当しなくなった場合、承認が取り消されることもあります。

承認が取り消されれば、所得税が課されることになりますが、課税対象者は承認が取り消される時期によって変わります。

公益法人等が寄附財産を利用する前に承認が取り消された場合、寄附した人が課税対象者です。

一方、寄附財産を利用後に承認が取り消された場合には、寄附を受けた公益法人等が課税対象者となります。

なお譲渡所得が課される時期は、原則として取り消された日の属する年分です。

措置法40条は寄附する前から特例適用の準備をすること

措置法40条の特例は1度申請が承認されたとしても、公益目的事業の用に直接供しない場合など、要件を満たさなくなれば承認が取り消され、後から課税される可能性もあります。

したがって

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