税務署にとって税務調査は、適切に納税されなかった税金を回収すると共に、脱税行為をした納税者に加算税等のペナルティーを課すために実施します。
加算税の中で最も重いペナルティーは重加算税であり、税務調査では重加算税を課税するために「質問応答記録書」を作成することがあります。
本記事では、質問応答記録書を作成した際の影響と、作成協力を求められた場合の対処法について解説しますので、税務調査を受ける前にご確認ください。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
税務署が質問応答記録書を作成する目的
質問応答記録書とは、調査担当者の質問に対して納税者が回答したものを証拠として保管するための書類です。
申告漏れの財産があった場合、申告内容が適切でなかった理由によって課される加算税の種類は変わり、仮装隠ぺい行為により税金を過少申告(無申告)すると重加算税の対象となります。
調査担当者は税務調査で仮装隠ぺい行為を把握した場合、脱税行為が行われた証拠として質問応答記録書を作成することがあります。
ひと昔前までは調査担当者が一筆書かせるなどの方法により、脱税事実関係を証明する書類を作成していました。
しかし平成25年に税務調査手続きの法整備が行われた際、「質問応答記録書」を証拠書類とするやり方が登場し、現在の税務調査では一筆書かせる行為はほとんど行われていません。
質問応答記録書を作成したことによる効果
質問応答記録書は、税務署が税務調査の事実関係をまとめるために作成する書類であり、作成に協力しても納税者が利益を受けることは基本的にありません。
重加算税を課す際の重要な証拠として用いられる
質問応答記録書を作成する最大の理由は、税務調査の内容について裁判に発展した場合に証拠として活用するためです。
質問応答記録書は名前の通り、質問に対する回答を記録としてまとめた書類であり、調査担当者からの問いに対し、納税者が答える形式で作成します。
調査担当者からの質問は、納税者の住所・氏名・年齢・生年月日など、本人であることを確認するものから、売上除外した理由、脱税の意思や目的を答えさせるものなど、調査ごとに質問内容は違います。
質問応答記録書の作成は重加算税の必須要件ではありませんが、税務署は証拠として質問応答記録書の存在を重視しているため、調査担当者が重加算税を課す意思がある場合、記録書を作成すると考えてください。
質問応答記録書だけで重加算税を課されることはない
質問応答記録書は、調査担当者からの問いに対する回答をまとめた記録書です。
重加算税を賦課する目的で調査担当者が作成したとしても、質問で仮装隠ぺい行為に関するものがなければ事実関係をまとめた書類に留まるため、記録書の答弁だけで重加算税を課されることはありません。
質問応答記録書の質問事項は調査担当者が考えるため、税務署の職員の技量によって質問応答記録書の証拠としての効力も変わってきます。
作成された記録書の内容が納税者の発言を的確に反映していない場合、調査担当者に対して訂正や修正を求めることも必要です。
納税者は質問応答記録書を受け取ることができない
質問応答記録書は、作成する際に記録内容を確認できます。
ただし納税者が記録書を受け取ることはできませんし、コピーや撮影することもできません。
コピーできない理由として、税務署は質問応答記録書を税務調査資料として作成した行政文書として扱っているためです。
なお調査終了以降に質問応答記録書の内容を確認したい場合は、個人情報保護法に基づいた開示請求を行う必要があります。
開示請求しても、すぐに内容は確認できませんのでご注意ください。
質問応答記録書の要請があった場合の対処法
記録書の作成に応じるかは任意
質問応答記録書は調査担当者が調査資料として作成する書類なので、記録書の作成に協力するかは納税者の判断です。
記録書の作成に応じた場合、署名押印をする前に記録書の内容は確認でき、質問に対する回答が意図しない表現で記録されていれば、訂正や修正を求めることもできます。
質疑応答の内容が事実関係を証明する書類として活用される点については、納税者にとって利のある部分もあります。
しかし質問応答記録書は、原則重加算税を賦課するために作成するものですので、作成することに納得できない場合は応じないことも選択肢に入れてください。