税務調査は法人や富裕層に行われるイメージが強いですが、個人事業主や一般層の納税者に対しても実施されています。
また最近の流れとして、国税当局はフリーランスへの調査を積極的に行う可能性がありますので、調査対象になりやすいフリーランスの特徴と、税務調査を受けないための対処法について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
フリーランスへの税務調査が強化される理由
税務署は正しく申告・納税をしてもらうために税務調査を実施しますので、申告漏れが多い業界は、業界全体で調査対象となりやすいです。
働き方改革やテレワークの普及により、数年前に比べてフリーランスとして働く人が増えています。
会社員として働いていた方がフリーランスに転身して活動するケースも見受けられますが、会社員は年末調整で税金の精算を行っていたため、基本的に確定申告は不要でした。
それに対しフリーランスは、確定申告で所得税の納税額を計算しなければならず、大半のフリーランスは確定申告手続きがはじめてです。
税務に対する知識や経験が乏しいと、確定申告の計算ミスや特例・控除の適用誤りが発生しやすいですし、確定申告手続きを忘れているフリーランスもいます。
調査担当者は税務調査による実績が常に求められていますので、増差税額が見込まれる納税者に対し、積極的に調査を実施する傾向にあります。
毎年確定申告をしなければならないフリーランスは、3年から5年分の申告書をまとめて調査されることもありますし、脱税等が疑われる場合、最長7年分の申告書が調査対象となりますのでご注意ください。
税務調査の対象者となるフリーランスの条件
次に紹介する条件に1つでも該当するフリーランスは、税務調査の対象者になる確率が跳ね上がります。
期限後申告・無申告
所得税には期限内に申告した場合にのみ適用できる特例や控除があるため、申告期限を過ぎてから申告書を提出した場合、特例等を受けられない可能性があります。
期限後申告書を提出する納税者は、期限内に申告書を提出している納税者より納税意識が低いと認識されていますので、提出した申告書の内容に少しでも疑問点があれば調査対象となりやすいです。
事業が赤字であれば納税額は発生しませんが、無申告の状態だと税務署も事業内容が赤字と黒字のどちらなのか判断できないため、実態解明のために税務調査が行われることもあります。
利益を出しているフリーランスの無申告を税務署がそのまま放置することはないため、申告をしていない方は税務調査の連絡が来る前に申告書を提出してください。
計算ミス・添付書類漏れがある
期限内に申告書を提出していたとしても、計算ミスがあれば税務調査で指摘を受けます。
特例制度は書類添付が適用する際の条件となっていることも多く、申告書に必要書類が添付されていなければ特例を適用できません。
節税効果の高い特例制度を適用している場合、税務署は厳しく適否判定を行いますので、適用要件でなく添付書類も確認してから申告することが大切です。
前年比で売上や利益が大幅に伸びた又は減少した場合
売上が多い事業者や富裕層が税務調査を受けやすいのは、納税額が高額になるだけでなく、色々な税金対策が行われていることも要因です。
法人税や所得税は、利益が多いほど税率が高くなるため、経費を増やすことで利益を圧縮する節税方法もあります。
前年比で売上が急増した場合、経費も同様に増やせば利益を抑えられますが、事業に必要のない支出は経費として認められません。
また売上が前年と同程度なのにもかからず経費が大幅に増加している場合、経費の架空計上が疑われる可能性があります。
節税行為は合法ですが、架空計上などの脱税行為は違法であり、仮装隠蔽とみなされれば重加算税の対象となりますので、法を逸脱した手法を用いるのは厳禁です。