法人税の申告書を青色申告で行うためには、あらかじめ「青色申告の承認申請書」を提出し、税務署長から承認を受けなければなりません。
1度承認されれば継続して青色申告を行うことができますが、特定の条件を満たしてしまうと承認が取り消されてしまうので注意が必要です。
本記事では、法人税の青色申告の承認が取消しになるケースと、取り消された後に青色申告の再承認を受けるための手続き方法について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
法人税の青色申告の承認が取消しになるケース
法人税の青色申告は、企業が法人税法の規定に従って帳簿書類の備付けや記帳等を行うことを条件に税制上の優遇措置を受けることができる制度です。
青色申告は申請することで適用できるようになりますが、承認を受けた場合でも帳簿書類の備付け等が適正に行われなかったときは、青色申告の要件を満たさないものとして承認が取り消されます。
青色申告の承認が取消しされるケースは、下記の事由に該当する場合です。
<青色申告の取消事由>
・帳簿書類の備付けや記録、保存が規定されている事項に従って行われなかった
・税務署長から帳簿書類の提出等の指示があった際、その指示に従わなかった
・帳簿書類に記載等されている取引を隠蔽または仮装し、その記載等をした事項の全体について真実性を疑うに足りる相当の理由があった
・法人税の申告書を規定された期限までに提出しなかった
法人税の青色申告の取消しが行われてしまうと、該当する事業年度開始日以後に対象法人が提出した青色申告書は青色申告書以外の申告書とみなされ、対象期間の事業年度において既に適用していた青色申告の特典は受けられなくなります。
青色申告の取消処分が行われる場合、税務署は法人に対して取消しを行う旨および、取消処分の基因となった事実を付記した書面を作成し通知します。
欠損金を10年繰り越すことができる
欠損金の繰越控除は、事業年度に発生した欠損金(赤字)を最長10年繰り越す制度です。
経営が順調な企業でも、設備投資等を行った事業年度は欠損金が発生することもありますが、欠損金の繰越制度を活用していれば、その後に発生する利益から欠損金を差し引くことができます。
個人事業主の青色申告にも繰越控除の特典は存在しますが、繰越期間は3年ですので、法人の方がより長く欠損金を繰り越すことが可能です。
帳簿書類を提示しない場合における青色申告の承認の取消し
青色申告を適用するために必要な帳簿書類の備付け等は、物理的に帳簿書類が存在するだけでなく、税務調査等で税務署職員から提出を求められた場合に応じることも含まれます。
税務調査では、調査担当者が申告内容を確認するために帳簿書類の提示を求めることも多いですが、調査対象者が帳簿書類等の提示を拒否してしまうと、青色申告の承認が取消しになる可能性があるのでご注意ください。
帳簿書類を提示しなかったことを理由に承認が取り消される場合、取消対象となるのは提示がされなかった事業年度のうち、最も古い事業年度以後の事業年度からです。
なお、税務署は承認の取消す前に、法人に対して青色申告の承認の取消事由に該当する旨を告げるなど、提示の求めに応じるよう努める必要があるため、青色申告が即座に取消しになることはありません。
税務署長の指示に従わない場合における青色申告の承認の取消し
帳簿書類の備付け等を税務署長の指示に従って行わなかった場合、指示に係る事業年度以後の事業年度から青色申告の承認が取消しとなります。
税務署は青色申告の承認を取消す場合、法人に対して取消事由に該当する旨を告げますが、「法人の青色申告の承認の取消しについて(事務運営指針)」では、取消しを決定する前に法人が税務署長の指示に応じるよう説得することが求められています。
隠蔽または仮装の場合等における青色申告の承認の取消し
法人が下記のいずれかに該当する場合、その事業年度以降の事業年度から青色申告の承認が取消しになります。
(不正所得金額が500万円に満たないときを除く)
・欠損金額の減額更正が行われた際、その事業年度の更正により減少した部分の欠損金額のうち、隠蔽または仮装の事実に基づく金額が当初の申告に係る欠損金額の50%に相当する金額を超える場合
(不正欠損金額が500万円に満たないときを除く)
・帳簿書類への記載等が不十分である等の理由に、適正な所得金額を推計によらなければ計算ができないと認められる状況にある場合
無申告または期限後申告の場合における青色申告の承認の取消し
法人税の申告書を2事業年度連続して期限内に提出しなかったときも、青色申告の取消対象です。
青色申告が取り消される事由が無申告等の場合、取消事由となった2事業年度目の事業年度以後の事業年度から承認が取り消されます。