土地の相続税評価額は地目ごとで評価方法が異なり、特殊事情がある土地については個別に評価方法が定められています。
生産緑地に該当する農地は、一般的な農地とは評価方法が違いますので、今回は生産緑地の相続税評価額の計算方法および、生産緑地を相続する際の注意点について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
生産緑地制度の概要
生産緑地制度は、都市農地の計画的な保全を図るための制度で、建築制限や農地等として管理することを条件に、税負担の軽減措置が講じられています。
市街化調整区域内にある農地は宅地に比べ、固定資産税評価額が低く設定されているのに対し、市街化区域内の農地は宅地並みに固定資産税が課されます。
しかし、市街地農地でも生産緑地に指定されている農地は、固定資産税の軽減措置が適用されるため、農地の維持管理コストを抑えられるのが、生産緑地の指定を受ける主なメリットです。
一方、市街化区域内の農地は転用許可が不要なので、届出をせずに宅地転用することも可能ですが、生産緑地に指定された場合には、原則30年農地として管理しなければなりません。
生産緑地が指定された告示日から起算して30年を経過する日以後、またはその告示後に主たる従事者に死亡等の原因が生じたときは、生産緑地の所有者は市町村長に対して、生産緑地を時価で買い取るべき旨を申し出る(買取申出制度)ことができます。
生産緑地の相続税評価額の計算方法
生産緑地の相続税評価額は、評価対象地が生産緑地でないものとした場合の評価額をベースに計算します。
生産緑地ではないとした場合の評価額×(1-減額割合)=生産緑地の相続税評価額
路線価地域内にある生産緑地の場合、評価対象地が接している路線価に形状補正を行い、造成費を差し引いた額に面積を乗じて、「生産緑地ではないとした場合の評価額」を算出します。
課税時期において、市町村長に対して買取りの申出をすることができない生産緑地については、課税時期から買取りの申出をすることができる日までの期間に応じた割合を「減額割合」とします。
課税時期から買取りの申出をすることができることとなる日までの期間・・・5年以下
減額割合・・・10%
課税時期から買取りの申出をすることができることとなる日までの期間・・・5年超~10年以下
減額割合・・・15%
課税時期から買取りの申出をすることができることとなる日までの期間・・・10年超~15年以下
減額割合・・・20%
課税時期から買取りの申出をすることができることとなる日までの期間・・・15年超~20年以下
減額割合・・・25%
課税時期から買取りの申出をすることができることとなる日までの期間・・・20年超~25年以下
減額割合・・・30%
課税時期から買取りの申出をすることができることとなる日までの期間・・・20年超~25年以下
減額割合・・・35%
課税時期において市町村長に対し、買取りの申出が行われていた生産緑地または、買取りの申出をすることができる生産緑地の場合、「減額割合」は5%です。
生産緑地の主たる従事者が被相続人以外の場合、相続開始時点から買取りの申出をすることができることとなる日までの期間によって、減額割合が変動します。
一方、被相続人が生産緑地の主たる従事者であるときは、死亡により買取申出が可能となるため、生産緑地指定後すぐに相続が発生したとしても、減額割合は5%となるので注意してください。
生産緑地を相続した後の取扱い
被相続人が生産緑地の主たる従事者であり、その被相続人が死亡した場合には、営農を継続するかを判断しなければなりません。
相続後に生産緑地をどのように活用するかによって、生産緑地を継続するか、指定を解除するかの判断は変わってきます。
生産緑地の指定を継続するメリット・デメリット
生産緑地の主たる従事者である被相続人の相続が発生後、相続人が生産緑地の指定を継続すれば、固定資産税の軽減措置を引き続き適用できます。
生産緑地が指定されている農地は相続税の納税猶予制度の対象となるため、農地として管理する意思があるときは納税猶予制度の適用も選択肢です。
農業相続人が農地等を相続した場合の納税猶予の特例は、農業を引き継いだ相続人の死亡等により猶予が免除される規定があるため、相続税対策としても活用できます。
生産緑地を継続する際の注意点としては、対象地を引き続き農地として活用しなければならないため、利用用途が大幅に制限されます。
市場価値の高い場所にある土地を生産緑地に指定してしまうと、宅地利用などの選択肢が無くなるため、土地の価値に見合った有効利用ができない可能性があります。