税務会計と財務会計は、目的やルールが異なります。
適切に財務会計を行ったとしても、税務会計のしかたを間違えれば正しく税金計算を行えませんので、それぞれの仕組みを把握・理解することが大切です。
本記事では、税務会計と財務会計の違いと、法人税の申告手続きする際の注意点について解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
企業における財務会計とは
財務会計は、企業の経営状態や財政状態を確認するための作業をいいます。
融資を受ける際には財務諸表の提示が求められますし、株式会社には決算公告の義務があるため、貸借対照表と損益計算書(大会社に限る)を公開しなければなりません。
企業の会計担当者は会計基準に従って、日々の取引内容やお金の流れを記録し、損益計算書や貸借対照表、キャッシュフロー計算書などを作成します。
経営者は、作成した財務諸表に基づいて経営判断を決定することから、会計処理が適切に行われていないと判断を誤るリスクが生じます。
企業における税務会計とは
税務会計は、税金を計算するために行う作業をいい、法人税を計算する際には、法人税法に定められたルールに従って税務処理を行います。
財務会計では経費として計上している支出でも、税務会計では損金(経費)として認められないこともあります。
税務調査では、財務会計と税務会計で取扱いが異なる収入や支出に関して指摘されることが多いため、法人税の申告書を作成する際は、財務会計と税務会計の違いを理解しておかなければなりません。
財務会計と税務会計の違い
財務会計と税務会計の基本的な考え方は同じですが、異なる部分も少なくありません。
用語の違い
財務会計では、収入は「収益」、支出は「費用または経費」といい、収益から費用を差し引いた額は「利益」と呼称します。
一方、税務会計では、収入は「益金」、支出は「損金」といい、益金から損金を差し引いた額は「所得」と呼称します。
大筋のニュアンスは同じですが、収益に該当するものが益金に該当しない場合や、経費に該当する支出のうち、損金にならない支出などがあるので注意してください。
収入の相違点
財務会計における収益は企業の資産を増やす金額をいい、企業のメイン収益は営業収益、それ以外は営業外収益、臨時で生じた利益は特別利益として区分します。
税務会計における益金は、課税基準となる会社の収益のうち、法人税法で定められた別段の定めがあるものを調整した額です。
収益のうち、益金には算入しない(益金不算入)の対象となるものとしては、一定の受取配当等や法人税の還付金などが該当します。
支出の相違点
財務会計における費用は、企業が活動する上で支払った金額です。
税務会計では、課税基準となる財務会計の費用のうち、法人税法で定められた別段の定めがあるものを調整した額が損金となります。
たとえば、役員報酬は財務会計では費用計上できますが、税務上では一定の要件を満たした役員報酬しか損金として処理することができません。
交際費等も原則損金不算入ですが、一定額以内の交際費等は損金計上が認められています。
利益の相違点
財務会計における利益は、収益から費用を差し引いた額をいいます。
損益計算書においては、利益を「売上総利益」・「営業利益」・「経常利益」・「税引前当期純利益」・「当期純利益」の5種類に区分します。
利益と所得は意味合いとしては同じですが、財務会計と税務会計の処理が異なるため、算出される利益と所得の額にはズレが生じます。