デジタルトランスフォーメーション(DX)は、民間企業だけでなく、税務行政にも積極的に取り入れられています。
行政がデジタル化することで、税務手続きがしやすくなるなどの効果が期待される一方、DXの活用で税務調査のあり方も変化しています。
本記事では、税務行政におけるDXの導入が、納税者にどのような影響を与えるかについて解説します。
【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰
目次
税務行政がDXに期待している効果
国税庁が公表している「税務行政の将来像2023」では、次の3つの柱に基づいて、DXによる施策を進めることとしています。
- ・納税者の利便性の向上
- ・課税・徴収事務の効率化・高度化
- ・事業者のデジタル化促進
「納税者の利便性の向上」としては、納税者がスマートフォン(スマホ)やパソコンを使い、簡単かつ便利に手続きができる環境を構築することを目指しています。
以前からe-Taxなどによるオンライン手続きは可能でしたが、これからは税に馴染みのない納税者であっても、簡単に手続きできるような取り組みを進めています。
「課税・徴収事務の効率化・高度化」については、地方公共団体や他の機関との照会などをデジタル化し、税務業務でのデータ活用を積極的に行うことで、事務の効率化を図るものです。
「事業者のデジタル化促進」は、事業者に対して業務のデジタル化を促進する施策を実施し、事務処理の一貫したデジタル対応を可能にすることで、生産性向上などを目指すものです。
税務を起点としてデジタル化の循環を生み出すことで、社会全体にデジタル化のメリットが波及することを期待しています。
税務行政のデジタル化による納税者側のメリット
税務行政がDXを導入することによる恩恵は、行政側だけでなく、納税者側にもあります。
申告・年末調整の簡便化
申告関係では、確定申告時に給与情報等を自動入力化することで、入力作業を省略するだけでなく、入力誤りを防止できる効果が期待されています。
公金受取口座は、令和4年分の還付申告および更正の請求から振込先として利用可能となっています。
申告や請求手続きを行う場合、その都度口座情報を入力する必要がありましたが、公金受取口座を活用することで、口座情報の入力が不要になります。
年末調整手続きについても、保険料等の控除額などの計算や確認、システム入力を不要にすることで、企業・従業員双方の作業コスト軽減を目指しています。
申請等の簡便化、自己情報のオンライン確認
従来の税務行政の申請手続きは、書面でしか行えないものも多かったですが、デジタル化が進んでいる現在では、オンラインで申請できる種類も増えています。
たとえば、電子納税証明書はオンラインで請求・取得できますし、令和4年9月からはパソコンやスマートフォンでも、電子納税証明書(PDF)の請求から取得まで可能です。
申告書等情報取得サービスは、オンライン申請をすることで、所得税の確定申告書、青色申告決算書および収支内訳書を書面で提出していたとしても、パソコン・スマートフォンから、e-Taxを利用してPDFファイルを無料で取得できるようになっています。
また、税務署が保有する個人情報に対する開示請求も、オンライン申請で提出した申告書等の内容を確認できますので、税務署に行く手間を省略できます。
国税庁のDX化がもたらす
税務調査の変化
国税庁は、デジタル技術を税務調査にも活用していますので、税務調査の実施方法が今後変わる可能性があります。