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不動産事業者が消費税の還付を受けられる仕組みをわかりやすく解説

消費税の課税事業者は、支払った消費税額が受け取った消費税額よりも多い場合、消費税の還付を受けることができます。

不動産事業者は消費税の還付対象になりやすい業種ですが、税制改正により還付の仕組みが変更されている点に留意する必要があります。

本記事では、消費税還付の仕組みと、不動産事業者が還付を受けるための条件を解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

消費税が還付されるケース

消費税還付とは、納め過ぎた消費税を事業者に戻す仕組みをいいます。

消費税の課税事業者は、売上に対する消費税から仕入れにかかる消費税を差し引いた額を納めますが、仕入れにかかる消費税額のほうが大きい場合、その差額が還付されます。

たとえば、事業者の取引すべてが消費税の課税対象であり、かつ適用税率が同じ場合、赤字が発生している事業者であれば、消費税の還付を受けることが可能です。

また、事業が黒字であっても、売上に対して消費税が課されない取引が含まれている場合には、還付額が生じることもあります。

不動産関連の事業では、消費税が課されない取引も少なくないため、適切に手続きを行うことで、消費税の還付を受けられるケースが多く見られます。

不動産事業者が消費税還付を受けるための要件

不動産事業者が消費税の還付を受けるためには、一定の条件を満たしている必要があります。

消費税の課税事業者
であること

消費税の還付を受けられるのは、消費税の課税事業者に限られます。

支払った消費税額のほうが多いとしても、免税事業者に該当する事業者は還付を受けることはできません。

また、消費税の簡易課税制度を選択している事業者についても、消費税の還付は受けられません。

納め過ぎた消費税は、消費税の確定申告書を提出することで還付されますが、税務署は申告内容を審査してから還付を行います。

なお、申告書の記載不備や不明点がある場合には、税務調査が実施される可能性があるため、注意が必要です。

居住用・事業用物件の
違いによる影響

消費税還付の適用可否は、取得した不動産が居住用か事業用かによって大きく異なります。

一般的に、事業用物件は消費税の課税対象となるため、還付を受けられる可能性があります。

一方、居住用物件は原則として非課税であるため、消費税の還付対象外です。

なお、消費税の課税・非課税の判断は還付額に直結するため、取引ごとに課税区分を確認してください。

住宅貸付けにおける消費税の非課税範囲

住宅の貸付けに関する契約において、「人の居住の用」に供することが明らかな場合、基本的に消費税は非課税となります。

また、契約上に貸付けの用途が明示されていない場合でも、実際の貸付状況から「人の居住の用」に供されていることが明らかなときは、消費税は非課税とされます。

たとえば、住宅の賃借人が個人であり、実際に人の居住用として利用されていることが確認できる場合、消費税は非課税となります。

居住用賃貸建物の取得等に係る仕入税額控除の制限

事業者が国内で取得する居住用賃貸建物に関して、一定の条件を満たす場合には、その建物に係る課税仕入れ等の税額は、仕入税額控除の対象外となります。

「居住用賃貸建物」とは、次のいずれにも該当する建物を指します。

  • 住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物以外の建物
  • 高額特定資産または、調整対象自己建設高額資産に該当するもの

「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」とは、構造や設備の状況から住宅として使用されることが明らかでない建物をいいます。

たとえば、すべてが店舗として設計・建築されている建物は、「住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな建物」に該当します。

なお、建物の一部が店舗用に使用されている場合などにおいて、住宅の貸付けの用に供しないことが明らかな部分と、それ以外の部分(居住用賃貸部分)が合理的に区分されているときは、居住用賃貸部分以外の部分に係る課税仕入れ等の税額については、従来どおり仕入税額控除の対象となります。

<用語説明>

高額特定資産
1つの取引単位あたりの課税仕入れ等に係る支払対価(税抜)の額が1,000万円以上の棚卸資産または調整対象固定資産

調整対象自己建設高額資産
他者との契約、または事業者の棚卸資産として自ら建設等をした棚卸資産のうち、建設等に要した課税仕入れに係る支払対価の税抜き金額等の累計額が1,000万円以上となるもの

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