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資産除去債務とは


資産除去債務(しさんじょきょさいむ)というのはあまり聞きなれない会計用語かもしれません。

資産除去債務は「資産」も「負債」も含まれた用語ですが、負債です。

この記事では、環境問題とも関係のあるこの資産除去債務について解説します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

資産除去債務とは

企業の所有する土地や建物に土壌汚染がみられたり、アスベスト建材が使われたりしている場合には、法令でこれらを除去することが義務付けられています。

これら土地を改良したり、建物を解体したりする際に法令上の義務が生じる場合や契約上の決まりがあるときには、その所有者に原状回復費用や有害物質の撤去費用が発生します。

これらの費用を会計上、事前に負債として計上しておくことがあります。

この負債を資産除去債務といいます。

一言でいいますと資産除去債務とは、今の時点で見積もった将来の費用といえます。

企業の社会的責任は、経済や環境など、さまざまな分野に企業が与える影響を考え、得意先、株主、従業員などに対して適切に果たしていくものですが、その1つとして環境への配慮が挙げられます。

資産除去債務の計上は、その企業だけでなく周辺の環境をも考慮して計上する債務なのです。

SDGsのカラフルなアイコンの貼られたポスターを一度は見かけたことがあると思います。

この国連によって掲げられた持続可能な開発目標には、環境保全はもちろん人々のあらゆる活動について持続可能性(サスティナビリティ)を持つことが掲げられています。

また、わが国は経済社会においても、「サスティナブルな企業価値創造」という目標を掲げ、企業においては稼ぐ力だけでなく、社会的な価値と両立させることが課題とされています。

ESGというのは、環境:Environment、社会:Social、ガバナンス:Governanceの頭文字を取ったもので、最近ではこの3つの視点から企業を評価し、投資する「ESG投資」が注目されています。

今後は変化する不確かな状況の中で企業を継続させるためには、ビジネスにおける持続可能性だけでなく、社会や環境に対する持続可能性を備えておく必要がでてきているということです。

(国際連合広報センター:2030アジェンダ)
(経済産業省:サスティナブルな企業価値創造に向けた対話の実質化検討会 中間報告)

どのような企業が対象か?

中小企業用の望ましい会計処理等を示すものの1つに、「中小企業の会計に関する指針」があります。

2017年にリリースされた中小企業の会計に関する指針では、資産除去債務については企業の範囲が限定的であったため、盛り込まれませんでした。

企業の社屋などの賃貸借契約に基づく原状回復義務について、多くの中小企業においては費用を見積もることが難しい状況だったからです。

大企業向けのルールである「資産除去債務に関する会計基準」においても、「債務の金額を合理的に見積ることができない場合には、これを計上せず、当該債務額を合理的に見積ることができるようになった時点で負債として計上する」となっているほど、企業の体力が求められ、また、見積りも難しいといえます。

しかしながら、中小企業においても資産除去債務の必要性を認識し、資産除去債務を取り扱っているところはあります。

(企業会計基準委員会: 資産除去債務に関する会計基準)

資産除去債務の会計仕訳とは?

実際に資産除去債務を計上する時にはどのような会計仕訳が発生するかを簡単にご紹介します。

(例)
ある大型の機械を購入し、3年後に除却する予定であり、建物の1室を借りて機械を設置した。
賃借した建物のオーナーとは3年後の撤去時には、原状回復することを契約に盛り込んでいる。
建物の取得価額は900万円で定額法3年として計算し、割引率は5%とする。
この建物取得時における賃借建物の原状回復費用は200万円とする。

(取得時)


※資産除去債務 = 将来の費用 ÷ (1+割引率)3乗 =200万円 ÷ 1.157625

機械の取得時に原状回復費用がわかっているので将来の費用のうち、現在の見積り分を計上します。
200万円がすぐ必要ではないため、「割引計算」といわれる将来の費用を割り引いて現在の価値を計算するという計算方法を使用しています。
ここで重要なのは、機械の取得価額に将来の費用も含まれることです。

(1年目決算の減価償却時)


*利息費用 = 1年前の資産除去債務 × 割引率 
= 1,727,625 × 5% = 1年間に増えた資産除去債務
資産除去債務は、減価償却以外に時の経過による調整として、1年間に増えた資産除去債務を追加します。

結果的に、負債の部に表示される資産除去債務は次のようになります。
取得時 1,727,675 = 200万円 ÷ (1+0.05)3乗 = A
1年目 86,384 = A ×  0.05 = B
2年目 90,703 = (A+B) × 0.05 = C
3年目 95,238 = (A+B+C) × 0.05
(合 計 2,000,000)

(原状回復後)


原状回復をしたら、資産除去債務を取り崩します。実際に原状回復した時には、3年前の見積りどおりにいかないこともありますので、その時には別途費用を履行差額として計上します。

また、

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