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無償返還の届出書を提出した土地の相続税評価額の注意点


貸付地を評価する場合、借地権に相当する部分を差し引いた金額が相続税評価額となります。

しかし貸付地でも、評価対象の土地に対して「無償返還の届出書」が提出されていれば、借地権相当額は評価額から除かれません。

また無償返還の届出書を提出している場合でも、地代によって評価方法が異なりますので、計算する際の注意点をご説明します。

【この記事の監修者】
讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

土地の無償返還の届出書とは

無償返還の届出書は、借地権や賃貸借契約などにおいて、借地人が所有者に将来土地を返還する際、無償で戻すことを契約書で定めている場合に税務署へ提出する書類です。

届出書は、賃貸契約が法人間同士や土地所有者が個人の場合に提出できますが、個人間同士の場合は無償返還の届出書を提出できません。

提出先は土地所有者の納税地を管轄する税務署で、以下の書類を揃えて提出します。

<無償返還の届出書を提出する際の必要書類>
● 土地の無償返還に関する届出書(2部)
● 借地権などの契約書の写し(2部)
● 土地の価額の計算内容および参考事項を記載した書類(2部)

無償返還の届出書を提出した際の土地の相続税評価額

土地の無償返還の届出書を提出している土地の相続税評価額は、相続税の個別通達『相当の地代を支払っている場合等の借地権等についての相続税及び贈与税の取扱いについて』に基づいて計算します。

届出書の対象となる土地に係る借地権の価額は、ゼロと規定されているため、土地を貸し付けていたとしても、借地権相当額は差し引きません。

しかし地代を収受している場合においては、自用地価額の80%を土地の評価額とします。

土地の評価額が20%下がる理由としては、借地権の価額がゼロであっても、実質的に土地の利用制限があることなどを評価上考慮されていると考えられています。

使用貸借の場合は自用地評価

土地を無償で貸し付けている場合、土地は自用地として評価額を計算します。

無償返還の届出書を提出していても、貸付内容が使用貸借であれば評価額の20%減額は行いません。

また貸付地代が固定資産税相当の場合も、自用地評価の対象となるため、節税目的として無償返還の届出書を提出する際は地代にも注意してください。

なお法人税法では、賃料が固定資産税等の3倍以下の場合、収益事業に該当しないとの規定があります。
(法人税法施行規則第4条「住宅用土地の貸付業で収益事業に該当しないものの要件」)

相続税とは異なる税法の規定ですが、法人税の規定を参考に、固定資産税等の3倍超の地代が貸付地評価の一つの目安です。

同族法人の非上場株式を評価する場合

無償返還の届出書を提出し、相当地代を支払っている場合、借地権の評価額はゼロです。

しかし被相続人の同族法人の非上場株式を評価する場合は、自用地価額の20%相当額を借地権として資産計上し、計算しなければなりません。

ただ同族会社が被相続人以外の同族親族から土地を借り、その土地に対して無償返還の届出書を提出していた場合は、自用地価額の20%計上は不要です。

【関連記事】
非上場株式・上場株式の評価方法(相続税評価額の算出方法)を解説

無償返還の届出書を提出するタイミング

無償返還の届出書は、土地を無償で返還することが定められた後、遅滞なく提出することとされています。

明確な提出期限は決まっていませんが、対象となる契約書を作成したら、速やかに届出書を提出してください。

また無償返還の届出書は、借地権や賃貸借の契約において「土地は無償で返還する」と明記されていることが条件です。

届出書に添付する契約書に、無償返還に関する事項が明記されていなければ、届出が無効になりますので注意してください。

無償返還の届出書と小規模宅地等の特例の関係性

小規模宅地等の特例の『貸付事業用宅地等』は、相続開始の直前において被相続人等の不動産事業用等に供されていた土地が対象です。

貸付事業用宅地等は、対価を得て貸し付けているのが要件であり、無償返還の届出書の有無は特例適用する上で特に関係はありません。

そのため無償返還の届出書を提出していても、通常地代を受け取っていれば特例を適用できますが、使用貸借や固定資産税相当額しか地代を収受していない場合、貸付事業用宅地等を適用することはできません。

税務署は無償返還の届出書に関する評価誤りを注視している

無償返還の届出書の提出したことを忘れ、借地権相当額を差し引いて土地を評価した場合、税務署から指摘を受ける可能性が高いです。

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