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なぜ経費に計上した修繕費は税務調査で争点になりやすいのか?




会社の修繕費が税務調査で問題になるケースがあると聞きました。
どのような場合に問題になるのでしょうか?
また、注意ポイントがあれば教えてください。


【この記事の監修者】 讃良周泰税理士事務所 税理士 讃良 周泰

会社が経費に計上した修繕費は税務調査で争点になりやすいのですが、それは本当に経費に計上できるかどうか、つまり修繕費か資本的支出かどうかについて争われるからです。

修繕費と資本的支出の違い

「修繕費」
修理することにより、建物や機械などの設備を元通りに戻して、原状回復する費用のことを指します。

「資本的支出」
設備の増改築などにより、従来よりも設備の使用可能期間の延長や使用価値を向上させる費用のことを指します。

税法上の取り扱い

「修繕費」
費用を負担した事業年度に経費を一括計上できます。

「資本的支出」
費用の負担額を対象設備の耐用年数で按分した金額を、複数年にわたって経費に計上します。
例えば、耐用年数47年の建物を増改築すれば、その負担額は耐用年数の47年間で按分して経費に計上します。

主な争点

税務調査で争点になる主なポイントは、修繕費が資本的支出に該当するかどうかです。

(1)設備の補修工事

原状回復費用でも、既に使用している設備に対して行なったものか、中古で購入した設備に対して行なったものかで判断が分かれます。

・すでに使用している設備の場合:修繕費

・中古で購入した使用前の設備の場合:資本的支出
※使用前よりも使用可能期間の延長や使用価値を向上させるため

あくまでも、購入した時点における設備の状況を基準として、原状回復かどうかを判断します。

(2)設備の移設費用

機械などの設備を別の工場などへ移設するための費用は、その目的により判断が分かれます。

・通常の移設費用:修繕費
※特に性能は向上せず、使用価値が高まらないため

・生産性向上を図るための移設費用:資本的支出
※集中生産を図るなど、より良い立地条件に設置することにより生産性が向上すれば、設備の使用価値が向上するため(基本通達7-3-12))

(3)設備の部品の取替え費用

取替える部品が従来と同じものか、高性能の部品かにより判断が分かれます。

・従来と同じ部品:修繕費
※設備の原状回復を図るため

・従来よりも高性能の部品:資本的支出
※設備の使用価値が向上するため

例えば、建物をスチールサッシからアルミサッシに取替えた場合などは設備の使用価値が向上するため、資本的支出に該当します。

(4)建物等の改装費用

建物等を改装する目的により、判断が分かれます。

・改装前と同じ用途の場合:修繕費

※建物等の原状回復を図るため

・改装前と用途が異なる場合:資本的支出
※用途変更は建物等の使用価値を高めると考えられるため

用途変更の例としては、次のものがあげられます。
・倉庫を事務室に改装する
・喫茶店をバーに改装する
・普通倉庫を冷蔵倉庫に改装する

(5)修繕費の計上時期

設備の修理が完了した日が計上時期です。
特に、事業年度末日の直前に計上された修繕費は税務調査のチェック項目です。
争点は、本当にその事業年度の末日までに修理が完了したかどうかです。

修繕費の調査方法

税務署の調査方法には、主に次の5つがあります。

①見積書・請求書等を確認する
これらの明細書から修繕費か資本的支出かどうかを確認します。

②社内の担当者に確認を取る
見積書・請求書等は改ざんされる可能性があるため、設備の修繕に直接携わった社内の担当者に確認を取ります。

③現場へ足を運ぶ

修繕・増改築した設備について、調査官は実地調査を行ないます。

④修理の完了日を確認する
修繕費の計上時期を確認するためです。

⑤業者へ反面調査を実施する
上記①~④までの調査で不審点をぬぐえない場合には、税務署は修理した業者へ反面調査を実施します。

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